ラグビーのリザーブの役割とは?16番から23番は試合を決定づける「フィニッシャー」

ラグビーのリザーブの役割とは?16番から23番は試合を決定づける「フィニッシャー」
ラグビーのリザーブの役割とは?16番から23番は試合を決定づける「フィニッシャー」
ポジション・戦術

ラグビーの試合を観戦していると、後半に入って次々と選手が入れ替わるシーンを目にします。「スタメン(先発メンバー)」が主役だと思われがちですが、現代のラグビーにおいて、ベンチに控える「リザーブ(控え選手)」の存在は、勝敗を左右するほど極めて重要です。かつては「補欠」というイメージもありましたが、今では「フィニッシャー」や「インパクトプレーヤー」と呼ばれ、試合のラスト20分を制するための戦略的な切り札として位置づけられています。

「なぜあの選手はベンチスタートなのか?」「交代のタイミングにはどんな意図があるのか?」を知ることで、ラグビー観戦の面白さは何倍にも広がります。この記事では、ラグビーにおけるリザーブの役割、背番号の意味、そして監督たちが仕掛ける交代枠の戦略について、初心者の方にもわかりやすく徹底解説します。

ラグビーのリザーブの基本!人数と背番号のルール

まずは、ラグビーのリザーブに関する基本的なルールを整理しましょう。サッカーや野球とは異なり、ラグビーには独特の交代枠や背番号の決まりがあります。これを知っておくだけで、ベンチワークの意図が見えてきます。

ベンチ入りは8人!「23人」で戦うのが現代の常識

ラグビー(15人制)の試合では、グラウンドに立つ15人のスターティングメンバーに加え、ベンチに8人のリザーブ選手が入ることができます。つまり、チームは合計23人の「スコッド(登録メンバー)」で構成されます。昔のラグビーでは怪我以外での交代が認められない時代もありましたが、激しいコンタクトとスピードが求められる現代ラグビーでは、8人の交代枠をフルに活用することが勝利への必須条件となっています。

多くの強豪チームは、80分間を15人で戦い抜くことは考えていません。「最初の60分を全力でプレーする選手」と「残りの20分で爆発的なエネルギーを発揮する選手」というように、明確な役割分担がなされています。そのため、リザーブは単なる「控え」ではなく、試合を締めくくるための重要な戦力として扱われます。

リザーブの背番号は16番から23番

ラグビーの背番号はポジションごとに決まっていますが、リザーブ選手には16番から23番の番号が割り当てられます。この番号の割り振りにも、ある程度の決まりがあります。基本的には、フォワード(FW)の交代要員が若番をつけ、バックス(BK)の交代要員が遅い番号をつけるのが通例です。

一般的な内訳は以下のようになります。

【リザーブの背番号とポジションの目安】

16番:フッカー(HO)
17番:左プロップ(PR)
18番:右プロップ(PR)
19番:ロック(LO)
20番:フランカー(FL)またはナンバーエイト(No.8)
21番:スクラムハーフ(SH)
22番:スタンドオフ(SO)またはセンター(CTB)
23番:ウイング(WTB)またはフルバック(FB)

ただし、これは絶対的なルールではなく、チームの戦略によって「フォワードを多めにベンチに入れる」などの調整が行われるため、番号とポジションが多少前後することもあります。特に21番以降のバックスの番号は、チームによって柔軟に運用されています。

「交代(サブスティテューション)」と「入替(リプレイスメント)」の違い

ラグビーのメンバー変更には、厳密には「交代」と「入替」の2種類が存在します。普段の会話ではどちらも「交代」と言ってしまいがちですが、ルール上は明確に区別されています。

「入替(リプレイスメント)」は、戦術的な理由や、負傷ではない理由で選手を代えることを指します。この場合、一度ベンチに下がった選手は、原則として試合に戻ることはできません。監督が「流れを変えたい」「フレッシュな選手を入れたい」と判断して行うのがこれにあたります。

一方、「交代(サブスティテューション)」は、怪我による退場や出血、脳震盪の疑いがある場合などに行われます。出血や脳震盪のチェック(HIA)のための一時的な交代であれば、治療や検査を終えた選手が再びグラウンドに戻ることが可能です。この「戻れるか、戻れないか」は、試合終盤の怪我人発生時に大きな意味を持ってきます。

一度退いた選手が戻れる「リエントリー」の特例

先ほど「戦術的入替で退いた選手は戻れない」と説明しましたが、これには重要な例外があります。それが「フロントロー(プロップとフッカー)の負傷時」です。

スクラムの最前列で体を張るフロントローは、非常に専門性が高く、危険を伴うポジションです。そのため、安全上の理由から「スクラムを組める選手」が怪我をしてしまった場合のみ、すでに退いたフロントローの選手が再出場(リエントリー)することが認められています。これは選手の安全を守るための特例措置であり、ラグビーならではのユニークなルールの一つです。

「控え」ではない!試合を決める「インパクトプレーヤー」の役割

リザーブ選手は、スタメン選手よりも実力が劣るからベンチにいるわけではありません。むしろ、特定の局面でスタメン以上の力を発揮することを期待されてベンチに置かれるケースが増えています。

エディー・ジョーンズ監督が広めた「フィニッシャー」という概念

かつて日本代表を率い、イングランド代表監督なども歴任したエディー・ジョーンズ氏は、リザーブ選手のことを「フィニッシャー(試合を終わらせる人)」と呼びました。これは選手のモチベーションを高めるためだけでなく、その役割を的確に表した言葉です。

ラグビーの後半20分は、選手の疲労がピークに達し、判断力やスピードが鈍る時間帯です。ここで元気な選手が登場すれば、相対的にものすごいスピードで走っているように見えます。フィニッシャーの役割は、疲れた相手ディフェンスを切り裂き、接戦を勝ち切る、あるいはリードを守り切って試合を「完了(フィニッシュ)」させることです。

流れを一変させる「インパクトプレーヤー」

試合が膠着状態(こうちゃくじょうたい)に陥ったとき、閉塞感を打破するために投入される選手を「インパクトプレーヤー」と呼びます。彼らに求められるのは、安定感よりも「意外性」や「爆発力」です。

例えば、ハンドリングスキルはずば抜けているがスタミナに不安がある選手や、一発のタックルでボールを奪えるパワー型の選手などがこれに該当します。「彼が入れば何かが起きる」という期待感を背負い、ピッチに入った瞬間からトップギアでプレーすることが求められます。

「フレッシュレッグ」が相手に与える脅威

解説などでよく耳にする「フレッシュレッグ(Fresh Legs)」という言葉は、文字通り「疲れていない元気な足」を意味します。後半、相手のフォワードたちがスクラムやタックルで消耗し、足が止まりかけている時に、このフレッシュレッグを持つリザーブ選手が投入されると、相手にとっては悪夢のような展開になります。

スタメン選手が60分間かけて相手の体力を削り取り、ボディブローのようにダメージを与えた後、フレッシュレッグを持つリザーブ選手がトドメを刺す。これが現代ラグビーの王道とも言える勝利の方程式です。つまり、スタメンとリザーブは「役割のリレー」を行っているのです。

メンタル面の準備と難しさ

リザーブ選手には、技術だけでなく強靭なメンタルも求められます。いつ出番が来るかわからない中で、常に集中力を維持しなければならないからです。開始5分で怪我人が出て急遽出場することもあれば、最後まで出番がないこともあります。

また、体が冷えた状態でいきなり試合の激しいスピードに順応しなければなりません。そのため、ハーフタイムや試合中のインゴール裏(ウォームアップエリア)では、入念に体を動かし、息を上げて心拍数を試合レベルまで高める準備(アップ)を繰り返しています。ベンチワークを見る際は、彼らが裏でどのような準備をしているかにも注目してみてください。

ポジション別解説・フォワード(FW)のリザーブの役割

ここからは、ポジションごとにリザーブ選手に求められる具体的なタスクを見ていきましょう。まずは、スクラムやラインアウトなどセットプレーの要となるフォワード編です。

フロントロー(PR・HO)は必ず交代する?

背番号1番〜3番のフロントロー(プロップ・フッカー)は、リザーブの中でも特に交代の頻度が高いポジションです。体重100kgを超える巨体同士がスクラムで押し合うため、首や腰への負担が凄まじく、体力の消耗が激しいためです。多くのチームが、後半10分〜20分頃にフロントローを「総入れ替え」します。

ここで重要なのが、スクラムの強さを維持、あるいは強化できるかです。スタメンが相手を疲れさせた後に、さらに強力なスクラムを組めるリザーブが登場すれば、相手の反則を誘い、一気に試合を有利に進めることができます。これを狙って、あえて強力な選手をリザーブに置くチームも少なくありません。

安全を守る「アンコンテステッド・スクラム」のルール

フロントローのリザーブには、安全に関わる重要なルールがあります。もし怪我などでフロントローを組める選手がいなくなってしまった場合、スクラムは押し合いをしない「アンコンテステッド・スクラム」に変更されます。これは危険防止のための措置ですが、スクラムを武器とするチームにとっては大きな不利になります。

さらに、アンコンテステッド・スクラムが発生した場合、原因を作ったチームは「選手を一人減らしてプレーしなければならない」などのペナルティが課される場合もあります(ルールを悪用してスクラムを回避するのを防ぐため)。そのため、フロントローのリザーブ枠(通常16, 17, 18番)には、確実にスクラムが組める専門職を配置することが義務付けられています。

【豆知識:HIA(脳震盪評価)】
激しいコンタクトで頭を打った疑いがある場合、HIA(Head Injury Assessment)という検査が行われます。この場合、検査中の12分間以内であれば、一時的にリザーブ選手が出場できます。検査の結果「異常なし」なら元の選手が戻り、「異常あり」ならそのまま正式な交代となります。

セカンドロー(LO)とバックロー(FL/No.8)の役割

ロック(LO)やバックロー(FL/No.8)のリザーブ選手(19番、20番あたり)に求められるのは、落ちてきた運動量を補填することです。後半、タックルの回数が減ったり、密集への寄りが遅くなったりすると致命傷になります。

また、これらのポジションのリザーブには「ユーティリティ性(多機能性)」も求められます。「ロックもフランカーもできる選手」がベンチに一人いると、怪我人が出た際に柔軟に対応できるからです。長身を活かしてラインアウトの守備固めとして投入されることもあります。

ポジション別解説・バックス(BK)のリザーブの役割

次に、スピードと展開力が鍵となるバックスのリザーブについて解説します。バックスの交代は、戦術そのものをガラリと変える力を持っています。

スクラムハーフ(SH)による「テンポチェンジ」

背番号21番をつけることが多いスクラムハーフ(SH)のリザーブ。SHはボールに触れる回数が最も多く、攻撃のリズムを作る指揮者です。スタメンのSHが手堅くキックを使ってエリアを取るタイプだった場合、リザーブには素早いパス回しでランニングラグビーを展開するタイプを置くなど、タイプが異なる選手を起用することがよくあります。

後半、相手が疲れて足が止まってきたタイミングで、超高速テンポでボールをさばくSHが登場すると、相手ディフェンスは整備する時間がなくなり、穴が生まれやすくなります。この「テンポチェンジ」こそが、SH交代の最大の狙いです。

司令塔(SO)の交代とゲームプランの変更

スタンドオフ(SO)はチームの司令塔です。接戦の終盤、点差によって求められるプレーは「トライを取りに行く」のか「PG(ペナルティゴール)で点を積み重ねる」のか、あるいは「キックで陣地を挽回して時間を稼ぐ」のか変わります。

リザーブのSOには、その時点での点差と残り時間を冷静に判断し、ゲームプランを修正する能力が求められます。また、プレースキッカー(ゴールキックを蹴る選手)としての能力も重要です。勝負を決める最後のゴールキックを託されることも多いため、強心臓の持ち主である必要があります。

「ユーティリティバックス」という重宝される存在

バックスのリザーブ枠は、フォワードに比べて少ない(通常3枠程度)傾向にあります。そのため、一人の選手で複数のポジションをこなせる「ユーティリティプレーヤー」は非常に重宝されます。

例えば、「SOとFB(フルバック)ができる」「CTB(センター)とWTB(ウイング)ができる」といった選手です。22番や23番をつける選手は、こうした複数のポジションを高いレベルでこなせる「万能型」であることが多いです。彼らがベンチにいることで、誰が怪我をしてもパズルのようにポジションを組み替えて対応することができます。

勝負を分けるベンチワーク!「6-2」と「5-3」の戦略

最後に、監督が頭を悩ませる「ベンチメンバーの内訳」について解説します。リザーブ8人の内訳をどうするかは、そのチームがどうやって勝とうとしているかを示すメッセージでもあります。

バランス重視の「5-3」システム

最もオーソドックスな形が「FW5人:BK3人」の構成です。

  • FW:フロントロー3人 + LO 1人 + バックロー 1人
  • BK:SH 1人 + SO/CTB系 1人 + WTB/FB系 1人

この構成は、FWとBKのどちらに怪我人が出てもバランスよく対応できるため、リスク管理に優れています。多くのチームが基本的にはこの「5-3」を採用します。

南アフリカが世界に見せつけた「6-2」システム

近年トレンドとなっているのが、「FW6人:BK2人」という、フォワード偏重の構成です。これは2019年のワールドカップで優勝した南アフリカ代表が採用し、世界的に有名になりました。

FWのリザーブを6人用意することで、後半にフォワードパックのほとんど(8人中6人など)をフレッシュな選手に入れ替えることができます。これにより、80分間を通して圧倒的なパワーとフィジカルを維持し続けることが可能になります。南アフリカはこの強力なリザーブFW陣を「ボム・スクワッド(爆弾処理班/特攻野郎)」と呼び、他国を震え上がらせました。

ただし、BKの控えが2人しかいないため、BKに怪我人が続出した場合はFWの選手を無理やりBKのポジションに配置しなければならないリスクも抱えています。まさに「肉を切らせて骨を断つ」攻撃的な戦略です。

まとめ:リザーブの役割を知って観戦を楽しもう

まとめ
まとめ

ラグビーにおけるリザーブは、単なる「控え選手」ではありません。彼らは試合の流れを変え、勝利を手繰り寄せるための「切り札」であり、チーム戦術の核心を担っています。

【今回のポイントのおさらい】

  • ✅ 現代ラグビーは23人全員で戦う総力戦
  • ✅ リザーブは「フィニッシャー」「インパクトプレーヤー」と呼ばれる
  • ✅ 16番〜23番の選手にはそれぞれ明確な役割(タスク)がある
  • ✅ FW重視の「6-2」やバランスの「5-3」など、ベンチ入り人数にも戦略がある

試合観戦中、選手交代のアナウンスが流れたら、ぜひ注目してください。「この時間帯にこの選手を入れたということは、監督はスクラムで勝負に出たな」とか「テンポを上げて走り勝つ気だな」といった監督の意図が読めるようになれば、あなたはもう立派なラグビー通です。リザーブ選手の活躍に注目して、ラグビー観戦をより深く楽しんでください。

タイトルとURLをコピーしました