ラグビーの試合を見ていると、選手たちが突然複雑な動きをして相手の防御を突破し、鮮やかにトライを決めるシーンを目にすることがあります。これは偶然ではなく、チーム全体で意思統一された「サインプレー」によるものです。これからラグビーを始める方や、もっと深く観戦を楽しみたい方にとって、どのような戦術があるのかを知ることは非常に大切です。
「ラグビー サインプレー 例」と検索してこの記事にたどり着いた皆さんは、きっと具体的な動きや仕組みを知りたいと思っていることでしょう。そこで今回は、セットプレーやフィールドプレーで使われる代表的なサインを、初心者の方にもわかりやすく噛み砕いて解説していきます。これを読めば、試合中の選手たちの意図が手に取るようにわかるようになります。
ラグビーのサインプレー例を知る前に:基本の考え方と仕組み

具体的なサインプレーの例を見ていく前に、まずはラグビーにおけるサインプレーの基本的な役割や、どのように決定されているのかという仕組みを理解しておきましょう。基礎知識があることで、この後の解説がよりスムーズに頭に入ってきます。
サインプレーとは何か?その目的と効果
ラグビーにおけるサインプレーとは、攻撃側があらかじめ決めておいた約束事に従って動く戦術のことです。主な目的は、相手ディフェンスの裏をかき、防御網に穴(ギャップ)を作ることです。単にボールをつなぐだけでは、整ったディフェンスを崩すのは容易ではありません。
そこで、おとり(デコイ)となる選手が走ったり、パスを出すふりをしたりすることで、相手の注意を逸らします。これにより、攻撃の起点となるスペースを生み出すのです。サインプレーが成功すると、数的有利な状況を作れたり、相手のタックルを無力化して大きく前進できたりします。
また、チーム全員が「次はどう動くか」を共有しているため、サポートの反応が早くなるというメリットもあります。迷いなく走れる分、スピードに乗った攻撃が可能になるのです。
誰がサインを出し、どう伝達するのか
サインを決定し、チーム全体に伝える役割は、プレーの状況によって異なります。一般的に、セットプレー(スクラムやラインアウト)の場合は、その中心となる選手が合図を送ります。
ラインアウトでは、ボールを投げ入れるフッカーや、司令塔的な役割を持つジャンパーが暗号(コード)を叫んだり、特定のジェスチャーをしたりして伝えます。スクラムの場合は、スクラムハーフやナンバーエイトが指の形や声で合図を送ることが多いです。
フィールドプレーの中では、スタンドオフ(SO)やスクラムハーフ(SH)といったゲームメーカーが、次の攻撃オプションを指示します。「ヘッズアップ」といって、相手の立ち位置を見て瞬時に判断を変えることもあり、高い判断力が求められるポジションです。
サインプレーを成功させるための重要ポイント
どれほど素晴らしいサインプレーのアイデアがあっても、それを実行するスキルがなければ成功しません。最も重要なのは「タイミング」と「演技力」です。パスの出し手と受け手の呼吸が少しでもずれると、ノックオンなどのミスにつながります。
また、おとりとなる選手が「本当にボールをもらう気がある」ように見せかけなければ、ディフェンスは騙されません。全力で走り込み、相手を引きつけてこそ、本命のランナーが活きてくるのです。
さらに、コミュニケーションも欠かせません。声を出して連携を確認し合うことで、プレッシャーのかかる試合局面でも冷静にサインを遂行できます。練習で何度も繰り返し合わせることで、阿吽の呼吸が生まれるのです。
ラインアウト起点のサインプレー例:ボール獲得から攻撃まで

ラグビーの試合中で最もサインプレーが多く見られるのが「ラインアウト」です。スローワーとジャンパーの呼吸、そしてその後の攻撃展開まで、無数のバリエーションが存在します。ここでは代表的なパターンを5つに分けて紹介します。
基本のスローイン位置(前・中・奥)の使い分け
ラインアウトのサインは、まず「どこに投げるか」から始まります。基本は「前(フロント)」「真ん中(ミドル)」「奥(バック)」の3箇所です。
前(フロント)へのスローは、距離が近いためミスが起きにくく、確実にボールを確保したい時に使われます。ただし、相手ディフェンスも近いため、そこから大きくゲインするのは難しい場合があります。
真ん中(ミドル)は最も一般的で、そこから左右どちらにも展開しやすいため、多くのサインプレーの起点となります。奥(バック)へのスローは難易度が高いですが、成功すれば相手ディフェンスラインを越えた位置でボールを持てるため、一気にチャンスが広がります。
これらの投げ分けを、数字や単語の組み合わせ(例:「4番」「カンガルー」など)で暗号化し、相手に悟られないように伝達しています。
モールを形成して押し込む「ドライブ」
フォワードの力が強いチームが得意とするのが、ラインアウトからモールを組んで押し込むサインプレーです。「ドライブ」とも呼ばれます。ボールをキャッチした選手が着地すると同時に、周囲の味方が密着して塊を作ります。
このプレーの鍵は、相手が対応する前に素早く強固なパックを作ることです。全員が低い姿勢でまとまり、一斉に足をかいて前進することで、相手ディフェンスを粉砕します。ゴール前でのラインアウトでは、そのままトライを狙う強力な武器となります。
単純に見えますが、ボールを持つ選手をどのように守るか、どの方向に力を加えるかなど、緻密な計算と練習が必要な高度なサインプレーの一つです。
相手の隙を突く「ショートラインアウト」
通常のラインアウトは7人のフォワードが並びますが、ルール上は2人以上いれば成立します。これを利用して、参加人数を減らして行うのが「ショートラインアウト」です。
人数を減らすことで、グラウンド上に広いスペースが生まれます。足の速い選手や突破力のある選手を配置し、相手フォワードが少ない状況を利用して突破を図ります。また、相手が人数の調整に戸惑っている隙に、素早くボールを入れて攻撃を開始することも可能です。
奇襲性が高く、試合の流れを変えたい時や、相手フォワードの動きが鈍いと感じた時に効果的なサインプレーです。
ショートラインアウトのメリット
・グラウンドを広く使える
・相手のセットアップの隙を突ける
・ミスマッチ(走力差など)を作りやすい
ジャンパーを囮にする「フェイクジャンプ」
相手のブロックをかわすために、複数の選手がジャンプの動作を行うサインプレーです。例えば、前の選手がジャンプすると見せかけて相手を釣っておき、実際には後ろの選手に投げる、といった動きです。
これを成功させるには、リフター(ジャンパーを持ち上げる選手)の動きが重要です。リフターが前後に動くことで相手を惑わせ、本命のジャンパーがフリーになる瞬間を作り出します。
一瞬の判断とスピードが勝負となり、スローワーとのタイミングが合わなければボールを奪われるリスクもありますが、決まれば完全にフリーな状態でボールを確保でき、次の攻撃へスムーズに移行できます。
バックスが参加する「ラインアウトムーブ」
ラインアウトはフォワードだけのものと思われがちですが、バックスの選手がラインアウトに参加したり、ボール確保直後に突っ込んできたりするサインプレーも頻繁に使われます。
例えば、センターの選手が勢いよく走り込んで、ラインアウトから直接パスを受ける「サイン」があります。フォワード同士の攻防に集中している相手ディフェンスにとって、スピードに乗ったバックスの突進は脅威です。
また、ウイングがラインアウトの後ろ側に回り込んでボールをもらうプレーなどもあり、誰が攻撃に参加してくるかわからない状態を作ることで、相手の守備に迷いを生じさせることができます。
スクラムからのサインプレー例:FWとBKの連携

スクラムは、8人のフォワードが組み合う力比べですが、ここからの攻撃も多彩なサインプレーの宝庫です。スクラムで相手を押し込んでいるか、あるいは押されているかによっても選択するサインが変わってきます。
No.8(ナンバーエイト)のサイドアタック
スクラムの最後尾にいるNo.8がボールを持ち出し、スクラムの狭いサイド(ブラインドサイド)や、スクラムハーフ付近を強襲するサインプレーです。
相手のフランカー(スクラムの側面にいる選手)がスクラムに集中している瞬間を狙って飛び出します。No.8は体格が良く、突破力のある選手が多いため、密集近辺で確実にゲインしたい場合に有効です。
また、スクラムハーフと連携して「8-9(ハチキュー)」と呼ばれるプレーを行い、No.8が持ち出してすぐにスクラムハーフにパスを戻し、ディフェンスを撹乱する動きもよく見られます。
ブラインドサイド(狭い側)を突く攻撃
スクラムがタッチライン寄りにある場合、ライン際(ブラインドサイド)のスペースは狭くなります。しかし、あえてこの狭いエリアを攻めるサインプレーがあります。
ウイング(WTB)がブラインドサイドに上がり、No.8やスクラムハーフからパスを受けて突破を図ります。相手ディフェンスは「狭い側には来ないだろう」あるいは「来ても止めやすい」と考えがちですが、意表を突くことで一気にビッグゲインにつながることがあります。
もし止められても、その後の攻撃で広いサイド(オープンサイド)に大きなスペースが残っているため、次のフェーズで有利に立てるという戦略的なメリットもあります。
スクラムハーフとの連携プレー
スクラムからボールが出た瞬間、スクラムハーフがどのような動きをするかで攻撃の方向が決まります。スクラムハーフが自らボールを持って走り出す場合もあれば、スタンドオフに長く速いパスを投げる場合もあります。
よくあるサインとして、スクラムハーフがボールを持ち出し、相手のフランカーを引きつけてから、走り込んできたフォワードやバックスにショートパスを通すプレーがあります。
スクラム周辺は選手が密集しているため、わずかなズレが大きな穴になります。スクラムハーフの俊敏性と判断力が、このエリアでのサインプレーの成否を握っています。
バックス(BK)の代表的なサインプレー例:華麗なパスワーク

ラグビーの醍醐味の一つである、バックスによるスピーディーなパス回し。ここでは、テレビ中継などでもよく耳にする基本的なサインプレーの形を紹介します。これらを知っていると、なぜそこでフリーな選手が生まれたのかが理解できるようになります。
クロス(X)とダミーラン
「クロス」は、ボールを持った選手と、その外側にいる選手が交差(クロス)するように走るプレーです。ボールキャリアが内側に切り込み、外側の選手が内側から走り込む、あるいはその逆の動きをします。
この交差する瞬間に、ボールを受け渡すのか、それとも受け渡すふり(ダミー)をして自分で持っていくのか、相手ディフェンスに二択を迫ります。ディフェンスがついダミーの選手に反応してしまうと、ボールを持った選手の前には誰もいない状態が生まれます。
角度を変えて走り込むことで、ディフェンスの視界から一瞬消える効果もあり、突破力の高いセンター同士でよく使われるサインです。
ループプレーの基本と応用
「ループ」は、パスを出した選手が、パスを受けた選手の外側を回り込んで(ループして)、再びパスをもらうプレーです。1人が2回ボールに触ることになります。
これにより、攻撃側の人数が一時的に1人増えたような状況(オーバーラップ)を作り出すことができます。相手ディフェンスはマークする対象を見失ったり、対応が遅れたりします。
スタンドオフがセンターにパスを出し、その背後を回ってもう一度ボールをもらう動きが基本です。非常に古典的なサインですが、タイミングが完璧であれば、現代ラグビーでも十分に通用する強力な武器です。
メモ:ループの注意点
ループプレーは横方向への移動距離が長くなるため、ディフェンスに詰められると逃げ場を失うリスクがあります。相手との距離感をしっかり見極めて使う必要があります。
スキップパス(飛ばしパス)
隣の選手を飛ばして、その外側の選手にパスを出すことを「スキップパス」または「飛ばしパス」と呼びます。通常は順送りにパスを回しますが、あえて一人飛ばすことで、ボールの移動速度を上げ、外側のスペースを素早く攻めることができます。
飛ばされる選手が「ボールをもらうふり」をして相手ディフェンスを引きつけることで、パスを受ける選手がフリーになりやすくなります。
特に、相手ディフェンスが内側に寄っている時や、大外に足の速いウイングが余っている時に有効なサインプレーです。ただし、パスの距離が長くなるため、インターセプト(パスカット)される危険性も高まります。
スイッチ(シザース)の効果
「スイッチ」または「シザース」は、ボールを持った選手と味方の選手が、ハサミの刃のようにすれ違いざまにボールを手渡しするプレーです。クロスの動きと似ていますが、より近距離で、手渡しパス(ハンドオフ)を行う点が特徴です。
進行方向を急激に変えることになるため、相手ディフェンスは逆を取られやすくなります。特に、流れるようなディフェンス(ドリフトディフェンス)をしてくる相手に対して、逆方向へ切り返すスイッチは非常に効果的です。
ゴールラインまであと数メートルという密集地帯でもよく使われ、一瞬の隙をついてトライをもぎ取るために有効なサインプレーです。
ペナルティキックからのサインプレー例:一瞬の判断

相手の反則によって得られるペナルティキック。ここでも、単にタッチキックやゴールキックを狙うだけでなく、意表を突くサインプレーが展開されます。
クイックタップでの速攻
ペナルティを得た瞬間、ボールを軽く蹴って(タップして)すぐに攻め始めるプレーです。相手ディフェンスが陣形を整える前に攻撃を仕掛けることで、大きなゲインを狙います。
これは事前に決まったサインというよりも、その場の状況判断で行われることが多いですが、チーム全体が「クイックがあるぞ」と意識共有していることが重要です。サポートが遅れると、孤立してボールを奪い返されるリスクがあるからです。
フォワードでの突進サイン
ゴール前でのペナルティでよく見られるのが、フォワードの選手がタップして、そのまま塊となって突っ込むサインプレーです。スクラムやラインアウトを選択せず、あえてタップキックを選ぶことで、相手に休む暇を与えずにフィジカル勝負を挑みます。
一度突進してポイントを作り、そこからさらに別のフォワードがサイドを突くなど、連続攻撃でゴールラインを割ることを目指します。
キックパスを使った奇襲
ペナルティからの再開で、スタンドオフなどが不意に逆サイドへキックパスを蹴るサインプレーです。相手ディフェンスは、ペナルティ付近に意識が集中しているため、大外のスペースが無警戒になっていることがあります。
ウイングの選手にあらかじめ合図を送っておき、正確なキックでボールを届ければ、誰もいないゾーンを独走してトライできる可能性があります。高度なキック技術と連携が求められる、スペクタクルなプレーです。
まとめ:ラグビーのサインプレー例を覚えて観戦やプレーに活かそう
今回は「ラグビー サインプレー 例」というキーワードで検索された方に向けて、ラインアウトやスクラム、そしてバックスの展開など、試合でよく使われる具体的な戦術を紹介しました。
ラグビーのサインプレーは、単なる動きのパターンではありません。15人全員が共通のイメージを持ち、タイミングを合わせ、相手との駆け引きに勝つための「知恵の結晶」です。一見すると複雑に見える動きも、「どこにスペースを作りたいのか」「誰を走らせたいのか」という目的を知ることで、その意図がはっきりと見えてきます。
これからラグビーをプレーする方は、まずは基本的なクロスやループなどの練習から始めてみてください。観戦がメインの方は、セットプレーの前に選手たちがどんな合図を送っているか、そしてその直後にどんなドラマが生まれるかに注目してみましょう。サインプレーの意味がわかると、ラグビーというスポーツの奥深さと面白さが、今の何倍にも広がるはずです。

