オールブラックスのハカを徹底解剖!意味や種類、感動の裏側まで

オールブラックスのハカを徹底解剖!意味や種類、感動の裏側まで
オールブラックスのハカを徹底解剖!意味や種類、感動の裏側まで
代表・リーグ・選手

ラグビーの試合開始直前、スタジアムが静寂に包まれる瞬間があります。黒いジャージに身を包んだ屈強な男たちが、整然と隊列を組み、地面を踏み鳴らし、空気を震わせるほどの咆哮を上げる。ニュージーランド代表「オールブラックス」による「ハカ(Haka)」です。

テレビの前でその迫力に圧倒され、鳥肌が立った経験がある方も多いのではないでしょうか。単なるパフォーマンスだと思われがちですが、そこには深い歴史や文化、そして選手たちの魂が込められています。「何を叫んでいるの?」「どんな意味があるの?」と疑問に思うことも多いはずです。

この記事では、オールブラックスのハカについて、その起源や歌詞の意味、種類の違い、そして対戦相手とのドラマチックな応酬まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。これを知れば、次の試合観戦が何倍も熱くなること間違いありません。

オールブラックスのハカとは?基礎知識と歴史

ラグビー観戦のハイライトの一つとも言える「ハカ」。まずは、この儀式がそもそも何なのか、そしてなぜラグビーの試合で行われるようになったのか、そのルーツと基礎知識から紐解いていきましょう。

ハカの本来の意味は「ダンス」

「ハカ(Haka)」という言葉を聞くと、多くの人が「戦いの踊り(ウォークライ)」をイメージするでしょう。確かに、相手を威嚇し、自らを鼓舞する側面はありますが、マオリ語で「ハカ」は単に「ダンス」や「パフォーマンス」を意味する言葉です。

ニュージーランドの先住民族であるマオリの人々にとって、ハカは生活の一部です。戦いの前だけでなく、部族間の歓迎の儀式、平和の祝宴、葬儀など、人生の重要な節目で披露されてきました。つまり、ハカは単なる威嚇行動ではなく、相手に対する敬意や歓迎、感謝、そして哀悼の意を表す、非常に神聖なコミュニケーション手段なのです。

足を踏み鳴らし、舌を出し、目を大きく見開く独特の動きは、体全体を使って感情やメッセージを伝えるためのものです。オールブラックスが試合前に行うハカも、対戦相手への「挑戦状」であると同時に、最高の舞台で戦えることへの「敬意」と「感謝」が込められています。

ラグビーとハカの歴史的な出会い

では、なぜラグビーの試合でハカが行われるようになったのでしょうか。その歴史は古く、1888年にさかのぼります。当時、ニュージーランドの先住民族を中心としたチーム「ニュージーランド・ネイティブズ」がイギリス遠征を行った際、試合前にハカを披露したのが始まりと言われています。

その後、1905年に「オリジナル・オールブラックス」と呼ばれる伝説的なチームがイギリス遠征を行った際、この伝統が本格的に定着しました。当時の観客にとって、遠い南の島国から来た大男たちが叫び、踊る姿は衝撃的であり、瞬く間に世界中のラグビーファンの注目を集めることとなりました。

以来、100年以上にわたり、ハカはオールブラックスのアイデンティティとして受け継がれています。時代とともにそのスタイルや込められる情熱は進化してきましたが、「チームの結束」と「誇り」を表現するという本質は変わっていません。今では、ハカを見ること自体を楽しみにスタジアムへ足を運ぶファンも世界中に数多く存在します。

「マナ」を高める精神的な儀式

ハカを理解する上で欠かせないのが、マオリ文化における「マナ(Mana)」という概念です。マナとは、権威、威厳、精神的な力、カリスマ性などを指す言葉で、人だけでなく、土地や自然、集団にも宿ると考えられています。

オールブラックスの選手たちが試合前にハカを行う最大の目的は、チーム全体の「マナ」を高めることにあります。大声で叫び、体を叩くことで、自分たちの内なるエネルギーを極限まで引き上げ、チーム全員の心を一つにするのです。これは、個々の選手が「私はオールブラックスの一員である」という自覚を強烈に再確認する瞬間でもあります。

また、ハカは先祖の魂とつながる儀式でもあります。過去の偉大な選手たちやマオリの戦士たちの魂を自分たちの体に降ろし、その力を借りて戦うという意味合いも含まれています。だからこそ、ハカの最中の選手たちの表情は、神がかったような凄みを帯びているのです。

代表的な2種類のハカ「カマテ」と「カパ・オ・パンゴ」

オールブラックスが披露するハカには、実は大きく分けて2つの種類があることをご存じでしょうか。伝統的な「カマテ(Ka Mate)」と、オールブラックスのために新しく作られた「カパ・オ・パンゴ(Kapa O Pango)」です。それぞれの特徴や背景を知ると、観戦の楽しみがさらに広がります。

伝統のハカ「カマテ」の誕生秘話

「カマテ(Ka Mate)」は、最も有名で長く親しまれてきたハカです。その起源は1820年頃までさかのぼり、マオリの部族長であるテ・ラウパラハによって作られました。このハカには、彼が敵対する部族から逃れ、九死に一生を得たというドラマチックな物語が背景にあります。

テ・ラウパラハは敵から逃げる途中、ある親切な部族長の助けを借りて、サツマイモを保管する地下の穴に身を隠しました。追っ手が近づき、絶体絶命の危機に瀕したとき、彼は「私は死ぬのか(Ka mate)、生きるのか(Ka ora)」と自問自答しました。これが有名な冒頭のフレーズです。

最終的に追っ手は去り、彼は穴から這い出して、自分を助けてくれた「毛深い男(部族長)」と太陽の光を目にします。死の恐怖から解放され、再び生を実感した歓喜と感謝を表現したのが、この「カマテ」なのです。つまり、これは戦いの歌である以上に、「生への喜び」と「逆境の克服」を称える歌なのです。

「カマテ」の歌詞と動きの意味

「カマテ」の歌詞は非常にシンプルですが、力強いリズムが特徴です。特に有名なのが、「Ka mate, Ka mate! Ka ora, Ka ora!(カマテ、カマテ!カオラ、カオラ!)」と繰り返す部分です。これは「私は死ぬ!私は死ぬ!いや、私は生きる!私は生きる!」という意味です。

【カマテの主な歌詞と意味】

Ka mate! Ka mate!(私は死ぬ!私は死ぬ!)

Ka ora! Ka ora!(私は生きる!私は生きる!)

Tenei te tangata puhuruhuru(見よ、この毛深い男を)

Nana nei i tiki mai whakawhiti te ra!(太陽を再び輝かせたこの男を!)

A, upane! Ka upane!(一歩、上へ!さらにもう一歩!)

Whiti te ra!(太陽の光が輝く!)

この歌詞に合わせて、選手たちは太ももを叩き、足を踏み鳴らします。最後の「Whiti te ra!(フィティ・テ・ラ!)」で全員が一斉に舌を出したり、目を剥いたりするポーズを決めますが、これは敵を威嚇するためだけでなく、体内のエネルギーを外に放出する動作だとも言われています。伝統と歴史の重みを感じさせる、オールブラックスの象徴的なパフォーマンスです。

新ハカ「カパ・オ・パンゴ」の登場

長年「カマテ」だけが演じられてきましたが、2005年、オールブラックスにとって歴史的な転換点が訪れました。新しいハカ「カパ・オ・パンゴ(Kapa O Pango)」が発表されたのです。これは、当時のキャプテンだったタナ・ウマガらが中心となり、「自分たち自身のアイデンティティを表現する独自のハカが必要だ」という思いから作られました。

「カマテ」が特定の部族長の個人的な物語に基づいているのに対し、「カパ・オ・パンゴ」は「オールブラックスというチームそのもの」をテーマにしています。歌詞の中には「黒いジャージ」や、ニュージーランドのシンボルである「シルバー・ファーン(銀シダ)」といった言葉が登場し、このチームの誇りとこの土地への愛着が強く歌われています。

当初は、あまりにも攻撃的で情熱的な動きが含まれていたため議論を呼びましたが、現在では「ここ一番の大勝負」で披露される特別なハカとして、ファンや選手から絶大な支持を得ています。このハカが始まると、スタジアムのボルテージは最高潮に達します。

「カパ・オ・パンゴ」の特徴的な動き

「カパ・オ・パンゴ」は、「闇のチーム(All Blacks)」という意味のタイトルが示す通り、非常に重厚で威圧感のある動きが特徴です。選手たちは地面を激しく叩き、天を仰ぎ、自分たちの強さを誇示します。特に印象的なのは、エンディングの動作です。

かつては、首を親指で切るような「スロート・スリット」と呼ばれるジェスチャーが含まれており、「過激すぎる」として物議を醸しました。しかし、チーム側は「相手の首を切るのではなく、自分たちの気管に命の息吹を送り込む動作だ」と説明してきました。現在では、心臓を叩くような動作や、天からエネルギーを引き寄せるような動きに変更・調整されることもありますが、その迫力は衰えていません。

主な歌詞の意味:

「黒いジャージの戦士たちよ、力を合わせろ!」

「我々の土地、我々の誇り!」

「シルバー・ファーンを胸に!」

このハカは、選手たちが完全に「戦闘モード」に入ったことを示すスイッチのような役割を果たしています。カマテに比べてリズムが変則的で、リーダーの先導に合わせて一気に爆発するエネルギーが見どころです。

どちらのハカを演じるかは誰が決める?

試合前に「カマテ」をやるのか、「カパ・オ・パンゴ」をやるのか、これは観客にとって最大の関心事の一つです。実は、どちらを行うかは試合直前にチームリーダーたちが決定しています。

一般的には、ワールドカップの決勝トーナメントや強豪国(南アフリカ、オーストラリア、フランスなど)との対戦など、特に重要度が高い試合で「カパ・オ・パンゴ」が選ばれる傾向があります。自分たちを極限まで鼓舞する必要があるシチュエーションだからです。一方、通常のテストマッチや親善試合では、伝統的な「カマテ」が選ばれることが多いです。

しかし、明確なルールがあるわけではありません。その日のチームの雰囲気、相手へのリスペクト、あるいは特別なメッセージを込めたい場合など、状況に応じて柔軟に選ばれます。イントロダクションの掛け声を聞いた瞬間、ファンは「今日はどっちだ!?」と耳を澄ませ、その選択に一喜一憂するのです。

ハカをリードする選手の選び方と役割

ハカの隊列の先頭に立ち、大声で掛け声をかけてチームを導く「リーダー」。彼は必ずしもチームのキャプテン(主将)とは限りません。では、一体どのような基準で選ばれ、どのような役割を担っているのでしょうか。

キャプテン=リーダーではない理由

ラグビーの試合においてキャプテンは絶対的な存在ですが、ハカにおいては少し事情が異なります。ハカのリーダー(リード役)は、キャプテンが務めることもありますが、多くの場合、マオリの血を引く選手や、マオリ文化に深く精通している選手が選ばれます。

これは、ハカが単なるパフォーマンスではなく、正確な発音や所作、そして精神性が求められる神聖な儀式だからです。マオリの言葉(テ・レオ・マオリ)を正しく発音し、その意味を深く理解して魂を込めて叫ぶことができる選手こそが、リーダーにふさわしいとされています。

もちろん、マオリ以外の選手がリーダーを務めることもあります。それは、その選手がチーム内で絶大な信頼を得ており(高いマナを持ち)、ハカのトレーニングを熱心に積み、文化への深いリスペクトを持っていると認められた場合です。

リーダーに求められる「マナ」と情熱

ハカのリーダーに最も必要な資質は、先ほども触れた「マナ」と、仲間を鼓舞する圧倒的な情熱です。リーダーの第一声が弱ければ、チーム全体の士気に関わります。そのため、普段から声が大きく、チームのムードメーカー的存在の選手が任されることが多いです。

リーダーは隊列から一人離れて前に立ち、チームメイトと向き合ったり、観客に向かって叫んだりします。彼の合図一つで15人、あるいは23人の大男たちが一斉に動き出す様は圧巻です。リーダーはまさに、チームの心臓の鼓動をコントロールする指揮者のような役割を果たしています。

過去には、タナ・ウマガやピリ・ウィプー、そして近年ではアーロン・スミスやTJ・ペレナラといった選手たちが名リーダーとして知られています。彼らの鬼気迫る表情と叫びは、味方だけでなく、対戦相手や観客の心さえも揺さぶります。

名リーダーたちが見せる独自のスタイル

ハカには決まった型がありますが、リーダーによってその「味」は大きく異なります。例えば、元オールブラックスのスクラムハーフ、TJ・ペレナラのハカは、全身全霊をかけた情熱的なスタイルで有名でした。彼は目を限界まで見開き、血管が切れそうなほどの大声で叫び、チームに火をつけました。

また、かつてのピリ・ウィプーは、威厳と落ち着きを兼ね備えた重厚なリードでチームを統率しました。2011年のワールドカップ決勝前、フランス相手に見せた彼のリードは、伝説として語り継がれています。

選手たちはハカの練習も欠かしません。遠征中もマオリ文化のアドバイザーから指導を受け、細かい動きや発音を修正します。リーダーはその中心となり、チーム全体のマオリ文化への理解度を高める責任も負っています。ハカのリーダーを見ることで、そのチームの精神的支柱が誰なのかが見えてくるのです。

試合前の儀式だけではない!対戦相手の「返礼」と名場面

ハカはオールブラックスだけのものではありません。それを受ける対戦相手がどう反応するかも、試合前の大きな見どころです。ハカを黙って見つめるのか、それとも何かアクションを起こすのか。そこには「ハカへの挑戦」とも言えるドラマがあります。

厳格な「10メートルルール」と罰金騒動

まず知っておきたいのが、ワールドラグビーが定める「10メートルルール」です。これは、ハカを行っている最中、相手チームはハーフウェイラインから10メートル以上離れていなければならないという規定です。過去に両チームが接近しすぎて一触即発の事態になったことがあるため、衝突を避けるために設けられました。

しかし、闘志あふれるチームは、このルールを破ってでも「引かない姿勢」を見せることがあります。その結果、試合後に罰金を科されることもありますが、選手たちにとっては、試合の主導権を握るための安い代償なのかもしれません。

このルールがあるからこそ、ギリギリまで近づこうとする相手チームと、それを制止しようとする審判団の攻防も、隠れた見どころとなっています。

伝説の「アロー(矢)」フォーメーション:2011年フランス戦

ハカに対する「返礼(チャレンジ)」として最も有名なのが、2011年ワールドカップ決勝、ニュージーランド対フランス戦です。フランス代表は、ハカに対抗するためにチーム全員で手をつなぎ、V字型の「矢(アロー)」のような陣形を作りました。

そして、ハカが進むにつれてじりじりと前進し、最後にはハーフウェイラインを越えてオールブラックスの目の前まで迫りました。キャプテンのデュソトワール選手をはじめ、フランスの選手たちの気迫は凄まじく、会場は異様な興奮に包まれました。

この行動によりフランス代表は後に罰金を科されましたが、ラグビーファンの間では「最も勇敢で美しいハカへの対抗」として、今でも語り継がれています。結果として試合は接戦となり、ハカへの対抗が試合の激しさを予感させた名場面でした。

V字隊列と不敵な笑み:2019年イングランド戦

記憶に新しいのが、2019年ワールドカップ日本大会の準決勝、ニュージーランド対イングランド戦です。イングランド代表は、ハカが始まると同時に、逆V字の隊列を組んでオールブラックスを包囲するように展開しました。

さらに、キャプテンのオーウェン・ファレル選手は、不敵な笑みを浮かべながらハカを見据え続けました。これは、当時のヘッドコーチであるエディー・ジョーンズ氏の「群衆になるな、個として立ち向かえ」という指示によるものでした。

この奇策はオールブラックスのリズムを崩すことに成功し、イングランドはこの試合で歴史的な勝利を収めました。ハカを単なる儀式として終わらせず、心理戦の一部として利用した高度な戦略でした。この時もイングランドには罰金処分が下されましたが、そのインパクトは絶大でした。

敬意か挑発か?相手チームの様々なスタイル

他にも、ハカへの対抗策はチームによって様々です。オーストラリア代表(ワラビーズ)は、ジャージの上着を脱ぐふりをして闘志を見せたこともあります。ウェールズ代表は、ハカが終わった後も一歩も動かず、オールブラックスと数分間にわたり睨み合いを続けた伝説の試合(2008年)があります。

2016年、シカゴで行われた試合では、アイルランド代表が急逝した元キャプテン、アンソニー・フォーリーに捧げるために「8の字(彼の背番号)」の隊列を組んでハカを迎え撃ちました。これにはオールブラックス側も敬意を表し、特別なハカを披露しました。

ハカを受けて立つ側の態度は、「挑発」と取られることもあれば、「最大級のリスペクト」と受け取られることもあります。いずれにせよ、ハカは一方的なショーではなく、両チームの魂がぶつかり合う最初の「コンタクトプレー」なのです。

ハカにまつわるトリビアと女子チーム「ブラックファーンズ」

オールブラックスのハカについて詳しくなってきたところで、さらに深掘りしたトリビアと、忘れてはならない女子チームのハカについてご紹介します。

女子代表「ブラックファーンズ」のハカ

ハカを行うのは男子チームだけではありません。女子ラグビーニュージーランド代表「ブラックファーンズ」もまた、試合前に素晴らしいハカを披露します。彼女たちのハカは「コ・ウヒア・マイ(Ko Uhia Mai)」と呼ばれ、「知らしめよ」という意味が込められています。

男子のハカが力強さと威圧感を前面に出すのに対し、ブラックファーンズのハカは、女性ならではのしなやかさと、底知れぬ強さ、そして高い精神性を感じさせます。彼女たちが一糸乱れぬ動きで声を合わせる姿は、美しくも恐ろしいほどの迫力があります。

「私たちはここにいる。私たちの力を見よ」と高らかに宣言する彼女たちのハカもまた、見る者の心を揺さぶります。ラグビーファンなら、ぜひ一度はブラックファーンズのハカも映像でチェックしてみてください。

他の国も踊る?「シピ・タウ」や「シヴァ・タウ」

試合前に踊るのはニュージーランドだけではありません。太平洋諸国の島々(パシフィック・アイランド)のチームも、それぞれ独自の「ウォークライ」を持っています。

・トンガ代表:「シピ・タウ (Sipi Tau)」
非常に攻撃的でテンポが速く、情熱的なのが特徴です。

・サモア代表:「シヴァ・タウ (Siva Tau)」
リズミカルで一体感があり、戦士たちの勇気を鼓舞します。

・フィジー代表:「シビ (Cibi)」または「ボレ (Bole)」
歴史ある戦いの踊りで、静かなる闘志を感じさせます。

ワールドカップなどでこれらの国同士、あるいはニュージーランドと対戦する場合、お互いのウォークライが同時に行われたり、交互に行われたりすることがあります。この「ウォークライ合戦」は、スタジアムが最も熱狂する瞬間の一つであり、南半球のラグビー文化の豊かさを象徴しています。

観客はどうすればいい?ハカ中のマナー

現地で、あるいはパブリックビューイングでハカを見る際、観客はどうすれば良いのでしょうか? 基本的には「静寂を守る」ことが最大のマナーとされています。

ハカは神聖な儀式であり、選手たちの声や息遣い、足音の一つ一つに意味があります。そのため、ハカが始まったら大声で騒いだり、野次を飛ばしたりせず、静かに見守るのが礼儀です。ニュージーランドのファンは、ハカの最中は固唾を飲んで見守り、終わった瞬間に割れんばかりの大歓声を送ります。

ただし、相手国開催の試合などでは、あえて自国の応援歌を歌ってハカの声をかき消そうとする(「スウィング・ロウ・スウィート・チャリオット」を歌うイングランドファンなど)場面も見られます。これはこれで、ホームチームのファンによる「対抗」の一種であり、文化の違いとも言えるでしょう。私たち日本人が観戦する場合は、まずは静かにその迫力を肌で感じることをおすすめします。

ハカの最中に笑顔?意外な心理状態

ハカの最中、選手たちは恐ろしい形相をしていますが、時折、微かに笑みを浮かべている選手を見かけることがあります。これは決してふざけているわけではありません。

極限の緊張状態の中でアドレナリンが大量に放出され、戦いへの興奮が最高潮に達したときに自然とこぼれる「武者震い」のような笑み、あるいは仲間と共に戦えることへの純粋な喜びの表現だと言われています。恐怖心を超越し、戦いを楽しむ領域に入った選手たちの表情にも注目してみてください。

まとめ:オールブラックスのハカを知って観戦をもっと楽しもう

まとめ
まとめ

オールブラックスの「ハカ」は、単なる試合前のパフォーマンスではありません。それは、マオリの伝統文化への敬意、先人たちから受け継いだ魂、そして「このチームのために戦う」という選手たちの強固な決意表明です。

「カマテ」に込められた生への感謝、「カパ・オ・パンゴ」に込められた黒衣の誇り、そしてリーダーたちの情熱と対戦相手との駆け引き。これらを知った上で見るハカは、これまでとは全く違った景色に見えるはずです。

1分間ほどの短い儀式の中に、ラグビーというスポーツの激しさ、美しさ、そして精神性のすべてが凝縮されています。次回の試合では、ぜひキックオフ前のこの神聖な時間に注目して、オールブラックスの魂の叫びを全身で感じ取ってみてください。きっと、ラグビーがもっと好きになるはずです。

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