ラグビーの試合を見ていると、フィールドの最後尾で一人待ち構え、空高く蹴り上げられたボールをキャッチして一気に敵陣へと切り込んでいく選手がいます。それが「フルバック(FB)」というポジションです。背番号15を背負う彼らは、チームにとって最後の守りの要であると同時に、攻撃の起点ともなる非常に重要な存在です。
初めてラグビーを見る人にとっても、フルバックの動きはダイナミックで分かりやすく、試合の行方を左右するスリリングなプレーが多いため、注目するだけで観戦の面白さが倍増します。この記事では、ラグビーフルバックの役割や特徴、そして現代ラグビーにおける重要性について、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
ラグビーフルバック(FB)の基本情報と背番号15の意味

ラグビーには15人の選手がフィールドに立ちますが、その中で最も後ろに位置し、全体を俯瞰しながらプレーするのがフルバックです。まずは、このポジションが具体的にどのような立ち位置にあり、なぜそのように呼ばれているのか、基本的な情報から紐解いていきましょう。
フルバックは単なる「後ろにいる人」ではありません。チーム全体のバランスを整え、危機を未然に防ぐための重要な判断を常に下しています。ここでは、ポジションの基本的な定義と、背番号15が持つ歴史的な意味、そしてチーム内での立ち位置について詳しく解説します。
ポジションの位置と「最後の砦」と呼ばれる理由
フルバック(Fullback)は、その名の通り「完全に(Full)後ろ(Back)にいる」選手という意味から名付けられました。スクラムやラインアウトといったセットプレーの場面でも、他のバックス陣(スタンドオフやセンター、ウイング)よりも後方に位置し、フィールド全体を見渡せる場所に立っています。
このポジションが「最後の砦」と呼ばれる最大の理由は、彼らの後ろにはもう誰もいないからです。もしフルバックが相手選手に抜かれてしまえば、それは即座に相手のトライ(得点)を意味します。そのため、絶対にミスが許されないという極限のプレッシャーの中でプレーしなければなりません。
しかし、守るだけが仕事ではありません。最後尾にいるということは、相手のディフェンスの穴や、味方の攻撃スペースが最もよく見える場所でもあります。守備の要でありながら、チャンスがあれば後方から一気に駆け上がり、攻撃参加してトライを狙うこともフルバックの大きな魅力です。攻守の両面において、チームの勝敗を背負う責任重大なポジションなのです。
背番号15が持つ意味と歴史的背景
ラグビーでは背番号がポジションと直結しており、先発メンバーの最後尾であるフルバックには必ず「15番」が与えられます。ラグビーの歴史において、背番号はフォワードの最前列であるプロップ(1番)から順番に振られていくため、一番後ろにいるフルバックが一番大きな数字をつけることになります。
かつてのラグビーでは、フルバックは専守防衛の役割が強く、あまり攻撃には参加せずに自陣を守ることが主な任務でした。しかし、ラグビーの戦術が進化するにつれて、15番の役割は劇的に変化してきました。現在では、単なる守備要員ではなく、攻撃の切り札としての能力も求められるようになっています。
背番号15をつける選手は、チーム内で最も信頼されている選手の一人と言っても過言ではありません。キック力、走力、タックル力、そして判断力など、あらゆるスキルが高いレベルで備わっていなければ務まらないからです。15番のジャージを着ることは、チームの危機を救い、勝利へと導くリーダーの一人であることを意味しているのです。
チームの司令塔としての役割と全体を見る目
ラグビーには「スタンドオフ(10番)」という攻撃の司令塔がいますが、実はフルバックも「第二の司令塔」や「影の司令塔」と呼ばれることがあります。これは、フルバックがフィールドの全体像を最も把握しやすい位置にいるためです。
前線で戦っている選手たちは、目の前の相手やボールに集中しているため、どうしても視野が狭くなりがちです。そこで、最後尾にいるフルバックが「右側が空いているぞ!」「ディフェンスラインを上げろ!」といった具体的な指示を大声で出し、味方を動かしています。これを「コーチング」と呼びます。
また、相手がどのような攻撃を仕掛けてくるかを予測し、事前にディフェンスの配置を修正するのもフルバックの重要な役割です。まるでチェスの名手のように、盤面全体を見て数手先を読む能力が求められます。身体能力だけでなく、高い戦術眼とリーダーシップが必要とされる、非常に知的なポジションでもあるのです。
試合を決める!フルバックに求められる重要な役割

フルバックには、他のポジションにはない特殊で、かつ責任の重い役割がいくつも課せられています。試合の流れを決定づけるビッグプレーの多くが、実はフルバックの判断と行動から生まれていることも少なくありません。
ここでは、具体的にどのようなプレーが求められているのかを4つのポイントに分けて解説します。これらの役割を知っておくと、試合中にフルバックがなぜその動きをしたのかが理解できるようになり、観戦の深みが増すはずです。
相手のキック処理とハイパントキャッチの重要性
ラグビーの試合では、相手チームが陣地を挽回したり、こちらの守備を崩したりするために、高く蹴り上げる「ハイパント」や、遠くへ飛ばすロングキックを多用してきます。これらを確実に処理(キャッチ)することが、フルバックの最も基本的かつ重要な仕事です。
特にハイパントキャッチは、非常に勇気が必要です。落下地点に入って空を見上げている無防備な状態で、相手のフォワードたちが猛スピードでタックルを狙って突進してくるからです。それでもフルバックは、恐怖心に打ち勝ち、空中でボールをがっちりと掴み取らなければなりません。
もしここでキャッチミス(ノックオン)をしてしまうと、相手にボールを奪われ、大ピンチに陥ります。逆に、空中で競り勝ってマイボールにできれば、そこから一気にカウンターアタックを仕掛けるチャンスが生まれます。空中戦の強さは、優秀なフルバックの条件の一つです。
陣地を回復するロングキックとエリアマネジメント
ボールをキャッチした後、周囲に相手選手が多くて走るスペースがない場合や、自陣深くピンチの場面では、キックを使って陣地を回復(挽回)します。このとき求められるのが、正確で飛距離のあるロングキックです。
フルバックのキックは、単に遠くへ飛ばせば良いというものではありません。「タッチラインの外に出してプレーを切るのか」「相手のいないスペースに蹴って走らせるのか」といった判断を瞬時に行い、試合を有利に進めるためのエリアマネジメントを行います。
特に、相手の背後にある広大なスペースへ正確にボールを落とす技術があれば、相手チームを後ろ走りにさせ、体力を消耗させることができます。正確無比なキック一本で戦況をひっくり返すことができるのも、フルバックの見せ場の一つです。
最後尾からのカウンターアタックでチャンスメイク
相手のキックをキャッチした際、目の前にスペースが空いていると判断すれば、フルバックは迷わずボールを持って走り出します。これが「カウンターアタック」です。相手のディフェンス陣形が整う前に攻め込むため、ビッグゲイン(大幅な前進)やトライにつながる可能性が高いプレーです。
フルバックはチームの中でもトップクラスのスピードを持つ選手が多く、助走をつけてトップスピードで相手ディフェンスに突っ込むことができます。相手選手からすると、加速した状態のフルバックを止めるのは非常に困難です。
また、自分で抜き去るだけでなく、引きつけておいて味方にパスを通すなど、攻撃の起点(チャンスメイク)となる動きも求められます。守備の選手がいきなり攻撃の主役に変わる瞬間は、スタジアム全体が大きく湧き上がる最高にエキサイティングな場面です。
ディフェンスラインの統率とラストパスの阻止
記事の冒頭でも触れたように、フルバックは守備における「最後の砦」です。味方のディフェンスラインが突破されたとき、最後に立ちはだかるのがフルバックです。ここでは絶対に抜かれてはいけないという気迫と、冷静なタックル技術が求められます。
1対1のタックルで相手を止めることはもちろんですが、相手が2人以上で攻めてきた場合などの数的不利な状況での対応力が問われます。相手がパスを出すのか、自分で走るのかをギリギリまで見極め、最適なタイミングで勝負を仕掛ける必要があります。
さらに、自分で止めるだけでなく、抜かれた味方のカバーに走ったり、次に危険になりそうなスペースを埋めたりと、常に動き回って守備の穴を塞ぎ続けます。チームの失点を防ぐスーパーセーブは、トライを決めるのと同じくらい、あるいはそれ以上に価値のあるプレーとして称賛されます。
フルバックに向いている人の特徴と身体能力

フルバックは、フィジカルの強さ、スピード、キックの技術、そしてメンタルの強さなど、ラグビー選手に求められる能力を総合的に高いレベルで持っている必要があります。では、具体的にどのような特徴を持つ選手がフルバックに向いているのでしょうか。
ここでは、技術面だけでなく、性格や精神面も含めた「フルバックの適性」について掘り下げていきます。これを読むと、選手たちの凄さがより具体的にイメージできるようになるでしょう。
どんな状況でも冷静さを保てるメンタル
フルバックにとって最も重要な資質の一つは、強靭なメンタルです。最後尾というポジションは孤独であり、ひとつのミスが即失点につながるという重圧が常にのしかかります。しかし、焦りや恐怖心を顔に出してはいけません。
例えば、自分のミスでピンチを招いたとしても、すぐに気持ちを切り替えて次のプレーに集中する必要があります。パニックになって判断を誤れば、傷口をさらに広げてしまうからです。「なんとかなる」「自分が止める」という強い責任感と、どんな修羅場でも動じない冷静沈着さが求められます。
チームメイトにとっても、後ろを振り返ったときにフルバックが堂々としている姿を見るだけで安心感が生まれます。プレーでチームを引っ張るだけでなく、精神的な支柱となれるような、肝の据わった性格の選手がこのポジションには適しています。
広い視野と瞬時の判断力
フィールド全体を見渡すことができるフルバックには、空間把握能力と戦術眼が不可欠です。22メートル×100メートルという広大なフィールドの中で、どこにスペースがあり、どこに危険が潜んでいるかを瞬時に把握しなければなりません。
この「眼」の良さは、攻撃時にも守備時にも活かされます。攻撃時には、相手ディフェンスのわずかな隙間を見つけて走り込みますし、守備時には、相手の攻撃パターンを予測して先回りします。これを一瞬の判断で行う必要があります。
判断の遅れは命取りです。キャッチしてから「どうしようかな」と考えている暇はありません。ボールが空中にある間に次のプレーを決めておくような、頭の回転の速さもフルバックには欠かせない能力です。
キック力とスピードを兼ね備えた身体能力
現代のフルバックには、アスリートとしての総合力の高さが求められます。まず必要なのが「スピード」です。広い範囲をカバーする守備範囲の広さや、カウンターアタックで相手を置き去りにする速さは必須条件と言えます。
次に「キック力」です。遠くまで飛ばすパワーだけでなく、狙った場所に落とすコントロール、走りながら蹴る技術、さらにはプレースキック(ゴールキック)を任されることも多いため、繊細な技術も必要です。
そして、ハイボールを競り合うための「ジャンプ力」や、大型選手と衝突しても負けない「フィジカルの強さ」も重要です。このように、走・攻・守のすべてにおいて高いスペックを要求されるため、チーム内で最も身体能力が高い選手が配置されることも珍しくありません。
現代ラグビーにおけるフルバックの戦術的進化

かつては「守備の人」というイメージが強かったフルバックですが、現代ラグビーにおいてはその役割が大きく進化しています。攻撃的で、よりクリエイティブなプレーが求められるようになり、チームの戦術の中核を担うようになっています。
ここでは、近年のラグビーで見られるフルバックの新しい役割や戦術的なトレンドについて解説します。これを知れば、なぜフルバックがあんなにも自由に動き回っているのか、その理由が見えてきます。
ダブルフルバック・システムとは?
最近の戦術でよく見られるのが、ウイング(11番・14番)の選手が後ろに下がり、フルバックと並んで守備やキック処理を行う形です。実質的にフルバックが2人いるような状態になるため、「ダブルフルバック」のような機能を持たせることがあります。
これにより、フルバック一人の負担を減らし、より広い範囲をカバーできるようになります。また、左右どちらにボールを蹴られても、利き足に合わせて蹴り返すことができる選手を配置しやすくなるメリットもあります。
このように、背番号15の選手だけでなく、バックスリー(ウイングとフルバック)全体で後ろを守り、攻撃に転じるという連携プレーが現代ラグビーの主流となっています。お互いの位置関係を常に確認し合う阿吽の呼吸が見どころです。
攻撃参加の増加とプレイメーカー化
現代のフルバックは、攻撃の局面においてスタンドオフ(10番)と並んで「第二のプレイメーカー」として振る舞うことが増えています。攻撃ラインに参加(ライン参加)し、パスを散らして味方のトライを演出する役割です。
特に、相手ディフェンスの意表を突くタイミングでラインに参加することで、守備の人数計算を狂わせ、数的優位(オーバーラップ)を作り出すことができます。スタンドオフからパスを受け、さらに外側のウイングへ決定的なパスを送る「ラストパスの出し手」としても機能します。
このように、自分で走るだけでなく、周りを活かすプレーも求められるようになったことで、パススキルの高い選手や、元々スタンドオフをやっていた選手がフルバックを務めるケースも増えてきています。
ウイング(WTB)との連携やポジションチェンジ
試合中、フルバックはウイングの選手と頻繁にポジションを入れ替わります。例えば、フルバックが攻撃参加してそのまま前線に残った場合、代わりにウイングの選手が後ろに下がってフルバックのポジションを埋めるといった動きです。
この流動的なポジションチェンジは、相手ディフェンスを混乱させる効果があります。誰がどこから攻めてくるのかを分かりにくくさせるためです。また、フルバックがウイングの位置に入って走力を活かした突破を図ることもあります。
したがって、現代のフルバックにはウイングのような決定力も必要ですし、逆にウイングにもフルバックのような守備力やキック処理能力が求められるようになっています。この三人の連携(バックスリーの連携)の良し悪しが、チームの強さを左右すると言っても過言ではありません。
現代フルバックの進化ポイント
・守備専任から「攻撃の起点」へ
・スタンドオフと並ぶ「第二の司令塔」としての機能
・ウイングとのシームレスな連携とポジションチェンジ
日本代表や世界で活躍する有名なフルバック選手

フルバックというポジションの魅力をより深く理解するには、実際に活躍している選手を見るのが一番です。彼らのプレーには、これまで解説してきた役割やスキルが凝縮されています。
ここでは、日本ラグビー界にブームを巻き起こしたレジェンドから、現在進行形で世界を驚かせているスーパースターまで、代表的なフルバックの選手を紹介します。ぜひ彼らの名前を検索して、動画などで実際のプレーを確認してみてください。
日本ラグビーブームの立役者・五郎丸歩選手
日本で「フルバック」というポジションを一躍有名にしたのが、五郎丸歩(ごろうまる あゆむ)元選手です。2015年のワールドカップイングランド大会で、日本代表が強豪南アフリカを破った「ブライトンの奇跡」の中心人物であり、その正確無比なプレースキックと独特のルーティン(五郎丸ポーズ)は社会現象にもなりました。
彼の魅力はキックだけではありません。身長185cm、体重100kgという、当時の日本人バックスとしては破格のフィジカルを持ち、外国人選手にも当たり負けしない強固なディフェンスと、安定したハイパントキャッチで日本のゴールラインを死守しました。
五郎丸選手は、「不動のフルバック」としてチームに安心感を与える存在でした。彼が後ろにいるからこそ、他の選手たちは安心して前に出て戦うことができたのです。日本ラグビーの歴史を変えた偉大なフルバックの一人です。
ユーティリティ性が光る山中亮平選手
近年の日本代表で長くフルバックを務め、2019年、2023年のワールドカップでも活躍したのが山中亮平(やまなか りょうへい)選手です。彼の最大の特徴は、身長188cmという恵まれた体格と、「左足」から繰り出される豪快なロングキックです。
彼の左足のキックは飛距離が凄まじく、自陣深くから一気に敵陣深くまでボールを飛ばし、局面を大きく変える力を持っています。また、彼はスタンドオフもこなせる器用さ(ユーティリティ性)を持っており、パススキルやゲームメイク能力にも長けています。
ライン参加のタイミングも絶妙で、大きなストライドを生かしたランニングで相手ディフェンスを切り裂きます。現代ラグビーに求められる「攻撃的なフルバック」を体現している選手と言えるでしょう。
世界最高峰のランナー、ボーデン・バレット選手
世界に目を向けると、ニュージーランド代表(オールブラックス)のボーデン・バレット選手が挙げられます。彼はスタンドオフとしても世界最高レベルですが、フルバックとして出場した際の破壊力は凄まじいものがあります。
彼の特徴は何といっても圧倒的なスピードと加速力です。相手が一瞬でも隙を見せれば、信じられないような速さで駆け抜け、あっという間にトライを奪ってしまいます。また、キックパスを使って味方にトライをさせる創造性あふれるプレーも得意としています。
「世界最優秀選手」にも複数回選ばれている彼は、まさにラグビー界のスーパースター。フルバックというポジションがどれほど自由で、どれほど試合を支配できるかを知りたければ、彼のプレーを見るのが一番の近道です。
変幻自在のステップ、松島幸太朗選手
日本代表の「フェラーリ」とも称される松島幸太朗(まつしま こうたろう)選手も、フルバックとして世界レベルのプレーを見せる選手です。ウイングとしての出場も多いですが、フルバックに入った時の攻撃参加能力は群を抜いています。
彼の武器は、相手を翻弄する変幻自在のステップと、トップスピードに乗った状態でのバランス感覚です。どんなに狭いスペースでも、細かいステップで相手をかわし、独走トライを決めてしまいます。
また、危機察知能力も高く、相手のキックに対して素早く反応してカバーに入り、そこからカウンターアタックでピンチをチャンスに変えてしまいます。見ていてワクワクする、華のあるプレーヤーです。
ラグビー観戦がもっと楽しくなるフルバックの注目ポイント

ここまでフルバックの役割や選手について解説してきましたが、実際に試合観戦をする際、どのような瞬間に注目すればより楽しめるのでしょうか。
テレビ中継やスタジアムで、「あ、今フルバックが良い仕事をした!」と気づけるようになると、ラグビー観戦のレベルが一段階上がります。ここでは、特に注目してほしい3つのシーンを紹介します。
キック合戦(蹴り合い)の攻防と緊張感
試合中、お互いのチームがボールを蹴り合うシーンが見られることがあります。これは「キックテニス」とも呼ばれ、単にボールを渡し合っているわけではなく、陣取り合戦をしている非常に高度な戦術的攻防です。
この時、フルバックは相手のいないスペースを探して蹴ったり、タッチライン際ギリギリを狙ったりします。注目してほしいのは、フルバックのポジショニングとキックの種類です。「次はどこに蹴るのか?」「相手をどう動かそうとしているのか?」を想像しながら見ると、静かな攻防の中に隠された緊張感を感じることができます。
相手ディフェンスを切り裂くライン参加のタイミング
バックス陣がパスを回して攻撃しているとき、突然画面の外から猛スピードでフルバックが現れ、ボールを受け取って突破するシーンがあります。これが「ライン参加」です。
このプレーの面白さは、その「タイミング」にあります。早すぎれば相手にマークされますし、遅すぎればパスが繋がりません。味方が相手を引きつけ、一瞬スペースができたその瞬間に走り込む、その呼吸に注目してください。
フルバックがラインに参加した瞬間、攻撃の人数が増え、大きなチャンスが生まれます。「来た!」と思わず声が出てしまうような、爽快な瞬間です。
トライ寸前での決死のタックル
相手選手が完全に抜け出し、「これはトライか!」と思ったその時、横や後ろからフルバックが飛び込んできてタックルで阻止するシーン。これはラグビーの中で最もドラマチックな瞬間の一つです。
これを「トライセービング・タックル」と呼びます。フルバックは絶対に諦めません。たとえ数センチでもゴールラインの手前で止めれば、チームを救うことができます。
身体を投げ出して必死に守るフルバックの姿は、観客の心を打ちます。派手なトライシーンだけでなく、こうした泥臭く献身的な守備にもぜひ注目して、大きな拍手を送ってください。
観戦メモ:
テレビ観戦の場合、画面の下の方(手前側)や端に見切れている選手がフルバックであることが多いです。全体が映るアングルになった時、一番後ろでポツンと立っている選手を探してみてください。彼が動き出した時、何かが起こる前触れです。
ラグビーフルバックのまとめ:攻守の要として輝く背番号15
ラグビーにおけるフルバックについて、その役割から魅力、注目選手まで詳しく解説してきました。最後に、今回の記事の要点を振り返ってみましょう。
フルバック(FB)のポイントまとめ
・最後の砦:チームの最後尾(背番号15)で守備を統率し、抜かれれば失点というプレッシャーの中で戦う。
・万能な能力:ハイボールキャッチ、正確なキック、スピード、激しいタックルと、走攻守すべてが高いレベルで求められる。
・攻撃の起点:現代ラグビーでは、カウンターアタックやライン参加でトライを生み出す「第二の司令塔」としても活躍。
・冷静なメンタル:どんなピンチでも動じない精神力と、瞬時の判断力でチームを救う。
フルバックは、ピンチを救うヒーローであり、チャンスを作り出す演出家でもあります。一見すると孤独なポジションに見えますが、彼らの広い視野と的確な判断がチーム全体を繋いでいるのです。
次にラグビーの試合を見る際は、ぜひ背番号15の動きを目で追ってみてください。ボールを持っていない時のポジショニングや、指示を出している姿、そしてここぞという場面での爆発的なランニングに気づくはずです。「フルバックが何をしているか」が分かれば、ラグビー観戦はもっと奥深く、もっとエキサイティングなものになります。
五郎丸選手や松島選手のような華麗なプレーはもちろん、泥臭くゴールラインを守る姿にも注目し、ラグビーというスポーツの魅力を存分に楽しんでください。

