タグラグビーを始めたばかりの人が、一番最初に「難しい!」と感じる壁。それが「オフサイド」です。「前に出てはいけない」「下がらないといけない」と言われても、試合中は夢中になってつい忘れてしまいますよね。この記事では、専門用語をできるだけ使わず、図解がなくてもイメージできるようにオフサイドの仕組みを解説します。子どもたちへの教え方に悩んでいる先生やコーチの方も、ぜひ参考にしてください。
タグラグビーのオフサイドとは?「見えない壁」をイメージしよう

ラグビーというスポーツには、「ボールを持っている人より前でプレーしてはいけない」という大原則があります。これはタグラグビーでも同じです。オフサイドを理解するための第一歩は、コートの中に現れる「見えない壁」を想像することから始まります。
自分たちの陣地と相手の陣地
タグラグビーでは、ボールがある場所が常に「現在地」です。ボールを持っている人から真横に引いた直線をイメージしてください。この線より自分たちのゴール側が「オンサイド(プレーしていい場所)」、相手のゴール側が「オフサイド(プレーしてはいけない場所)」になります。つまり、ボールより前に行くと、そこはもう「敵の陣地」に入り込んでいることになり、プレーに参加できなくなるのです。
攻撃側のオフサイド(スローフォワード)
攻撃している時に起こるオフサイドの代表が「スローフォワード」です。これは自分より前にいる味方にパスをしてしまう反則です。タグラグビーでは、ボールは常に後ろへ後ろへと繋いで前進しなければなりません。「自分より前にいる味方は、オフサイドの位置にいる」と覚えておきましょう。パスを受け取る人は、必ずボールを持っている人より後ろから走り込む必要があります。
守備側のオフサイド(待ち伏せ禁止)
守備側にとってのオフサイドは、「待ち伏せ」の禁止です。相手がボールを持って攻めてくるとき、守る側は相手の正面からタグを取りに行かなければなりません。もし、ボールを持っている人を通り過ぎて背後に回り込んでしまったり、最初から相手の後ろ側で待っていたりすると、それはオフサイドになります。常に「相手の正面」に立つことが、正しい守り方の基本です。
試合でよくあるオフサイドの反則パターン4選

ルールブックを読むと難しく感じますが、実際の試合で起こるオフサイドのパターンは決まっています。ここでは、特によくある4つのケースを紹介します。これさえ気をつければ、反則の回数はぐっと減ります。
1. タグを取った後の「戻り遅れ」
相手のタグを取った直後、守備側はその場に立ち止まってはいけません。タグが成立した瞬間、ボールがある場所(タグを取られた地点)に新しいオフサイドラインが生まれます。守備側の選手は、すぐに自分のゴール側へ戻らなければなりません。戻らずにその場に居座って、次のパスを邪魔しようとするとオフサイドになります。「タグを取ったら(取られたら)、すぐに下がる」が合言葉です。
2. スタートの「フライング(早出し)」
ゲームの開始や、反則後の再開(フリーパス)の場面でよく起こります。守備側はボールから5メートル(小学生ルールでは一般的に5メートル)離れなければなりませんが、相手がパスを出す前にジリジリと前に出てしまうことがあります。これがフライングによるオフサイドです。相手の手からボールが離れるまでは、我慢して待ちましょう。
3. ボールより前にいる味方へのパス
これは攻撃側のミスですが、初心者のうちは頻繁に起こります。ボールを持って走っている人が、焦ってつい自分より前にいる味方にパスを投げてしまうケースです。また、パスをもらう側の人が張り切って前に出すぎてしまい、ボールより前でパスを受けてしまうこともあります。パスは必ず「自分より後ろ」に投げ、「自分より後ろ」で受けるのが鉄則です。
4. 「タグ後の最初のパス」をカットしてしまう
学校の体育や初心者のルールでは、「タグを取られた直後のパスはカット(インターセプト)してはいけない」と決められていることが多いです。タグが成立した直後は、守備側は一度下がって体勢を整える必要があります。にもかかわらず、下がらずにパスを叩き落としたり、パスカットを狙って手を伸ばしたりすると反則になります。まずは相手にパスをさせ、その次の展開で守るのがタグラグビーのマナーです。
「タグ」が起きた瞬間の守り方とポジショニング

タグラグビーで最もオフサイドが起きやすいのは、「タグ!」という声が響いた瞬間です。この一瞬の動き出しが、上手なチームとそうでないチームの差になります。タグが起きたとき、守備側は具体的にどう動けばよいのでしょうか。
タグを取った本人は「透明人間」になる
タグを取った守備選手は、そのタグを相手に手渡して返す義務があります。実は、タグを返して自分の守備位置に戻るまでの間、その選手はゲームに参加できない「透明人間」のような状態になります。この間にパスを邪魔したり、相手の進路を塞いだりすると反則です。タグを取ったら、まずは素早くタグを返し、すぐに仲間の列まで戻ることが最優先です。
タグを取っていない他の選手はどうする?
タグを取らなかった他の守備選手たちも、のんびり見ている暇はありません。タグが成立した地点(ボールがある地点)よりも、自分たちのゴール側まで一斉に下がる必要があります。これを「ラインを上げる・下げる」と言います。ボールの動きに合わせて、チーム全員がゴム紐で繋がっているかのように連動して下がることが、オフサイドを防ぐコツです。
レフリーの「声」をヒントにする
試合中、レフリーは「オフサイド!下がって!」と声をかけてくれることがあります。この声は、反則を取る直前の「注意」であることが多いです。もしこの声が聞こえたら、ボールを見ずにまずは後ろへダッシュで戻りましょう。レフリーの声に素早く反応できれば、反則を取られずにプレーを続けさせてもらえることもあります(アドバンテージ)。
オフサイドにならないためのコツと練習法

理屈はわかっても、体が勝手に動いてしまうのがスポーツです。無意識のうちに正しい位置取りができるようになるための、簡単な意識の持ち方と練習の工夫を紹介します。
「横一列(フラット)」を意識する
守備の時は、隣の味方と手を繋げるくらいの距離感で「横一列」に並ぶことを意識しましょう。誰か一人が飛び出していると、そこにパスを通されて抜かれてしまいますし、その一人がオフサイドになりやすくなります。「隣の仲間を見る」という癖をつけるだけで、自然とオフサイドラインを守れるようになります。チーム全員で壁を作るイメージです。
コーンを使った「視覚化」練習
練習では、「ここまで戻る」という目印を置いてあげることが効果的です。例えば、攻撃側と守備側の間に色の違うコーンを置き、「タグが起きたら必ず青いコーンまで戻る」というルールでミニゲームを行います。見えないオフサイドラインを「見える化」することで、戻る距離感やタイミングを体で覚えることができます。慣れてきたらコーンを外してみましょう。
「だるまさんがころんだ」で静止確認
遊び感覚でできる練習として、「だるまさんがころんだ」の要素を取り入れるのもおすすめです。コーチが笛を吹いたら全員がその場でストップ(フリーズ)します。その時、自分がボールより前にいるか後ろにいるかを確認させます。「あ、今オフサイドの位置にいた!」と自分で気づく機会を作ることが、座学で説明するよりもずっと早い理解に繋がります。
指導者向け:子供たちにわかりやすく教えるには

小学生や初心者にオフサイドを教えるのは至難の業です。「ルールだから」と厳しく笛を吹きすぎると、ゲームがつまらなくなってしまいます。楽しくルールを学んでもらうための指導のポイントをまとめました。
「オフサイド」という言葉を使わない
最初は「オフサイド」という専門用語を使わず、「待ち伏せはズルだよ」「タグを取ったら一度お家に帰ろう」といった噛み砕いた言葉で伝えるのがおすすめです。特に低学年のうちは、「タグの後の最初のパスは、守る人は触っちゃダメ」というローカルルール(初心者ルール)を徹底するだけでも、ゲームはスムーズに進行します。
戻ることのメリットを伝える
「下がらないと反則になる」と教えるよりも、「下がった方が助走をつけて強く守れるよ」とメリットを伝えてみてください。実際に、後ろに下がってから前に出ることで、相手にプレッシャーをかけるスピード(ラインスピード)が上がります。ポジティブな理由付けをすることで、子供たちは自ら進んで下がるようになります。
良いプレー(オンサイド)を褒める
反則を指摘するだけでなく、ギリギリのところで踏みとどまってオフサイドを回避した選手を大いに褒めてあげましょう。「今の戻り、すごく速かったね!」「ナイスオンサイド!」と声をかけることで、チーム全体に「正しい位置に戻ることはかっこいい」という意識が芽生えます。減点方式ではなく加点方式でルールを浸透させていきましょう。
まとめ:タグラグビーのオフサイドは「思いやり」のルール
今回はタグラグビーのオフサイドについて、できるだけわかりやすく解説しました。最後に大切なポイントを振り返りましょう。
【オフサイド回避の3つのポイント】
1. ボールより前には出ない:常にボールを基準にして、自分たちのゴール側にいよう。
2. タグが起きたらすぐ下がる:タグを取った人も、その他の人も、一度リセットして体勢を整えよう。
3. パスは通させてあげる:特にタグ直後のパスは、焦ってカットせずに我慢しよう。
オフサイドのルールは、攻撃側が安全にパスを回せるように、そしてゲームがぐちゃぐちゃにならずに楽しめるように作られたものです。つまり、相手に対する「思いやり」や「マナー」のルールとも言えます。
最初は失敗しても大丈夫です。少しずつ「見えない壁」が見えるようになってくれば、タグラグビーはもっとスピーディーで面白いスポーツになります。仲間と声を掛け合いながら、フェアプレーで楽しみましょう!

