ラグビーの試合や練習風景で、選手たちが頭に装着しているボコボコとした帽子のようなもの。それが「ヘッドギア(ヘッドキャップ)」です。「あれを被っていれば絶対に安全なの?」「高校生は必ず着けないといけないの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
実は、ヘッドギアには意外と知られていない重要な役割や、試合に出るための厳格なルールが存在します。これからラグビーを始める方や、お子さんのために用具を揃えようとしている保護者の方に向けて、ヘッドギアの基礎知識から選び方、お手入れ方法までをやさしく解説します。
ラグビーでヘッドギアを着用する本当の目的と効果

ラグビーは激しいコンタクト(接触)が伴うスポーツです。その中でヘッドギアが果たす役割は非常に大きいものですが、その効果については正しく理解しておく必要があります。「これを被れば無敵」というわけではないのです。
脳振盪(のうしんとう)は防げるのか?
まず最初に知っておきたい最も重要な点は、「ヘッドギアは脳振盪を完全に防ぐものではない」ということです。以前は脳振盪予防になると信じられていましたが、現在の医学的な見解では、脳への衝撃(揺れ)を完全に抑える効果までは期待できないとされています。
しかし、全く意味がないわけではありません。頭同士がゴツンとぶつかった際の「直接的な衝撃」をクッションが吸収してくれるため、衝撃のピークを和らげる効果はあります。あくまで「軽減」であり、絶対的な防御ではないことを理解し、正しいタックルの技術を身につけることが最優先です。
耳や頭皮のケガを防ぐ重要な役割
ヘッドギアの最大の着用目的は、実は「外傷の予防」にあります。スクラムを組む際、フォワードの選手は耳が相手や味方の体と激しく擦れ合います。これを繰り返すと耳に血が溜まり、「ギョウザ耳(カリフラワーイヤー)」と呼ばれる変形を引き起こすことがあります。
また、タックルや密集戦でスパイクが当たったり、頭同士が擦れたりした際の切り傷(裂傷)や擦り傷を防ぐ効果は絶大です。頭部は血管が多く出血しやすいため、こうした生々しいケガを未然に防ぐためにヘッドギアは欠かせません。
プレー中の心理的な安心感と勇気
物理的な保護だけでなく、精神的なメリットも見逃せません。頭をガードされているという感覚は、選手に安心感を与えます。特に初心者の場合、恐怖心から体がすくんでしまうと、かえって大きなケガに繋がることがあります。
「ヘッドギアがあるから思い切ってタックルに入れる」という心理的な支え(勇気)になる点は、多くのプレーヤーが実感している効果の一つです。
ポジションによる着用率の違い
試合を見ると、ヘッドギアを着けている選手と着けていない選手がいることに気づくでしょう。一般的に、スクラムを組み、密集戦で体をぶつけ合う「フォワード」の選手は着用率が高い傾向にあります。特に耳の保護が必要だからです。
一方で、走ることがメインの「バックス」の選手は、視界の広さや音の聞こえやすさを優先して着用しないことも多いです。ただし、近年はポジションに関わらず、安全意識の高さから着用を選択する選手も増えています。
初心者でも失敗しないヘッドギアの選び方とサイズ感

ヘッドギアは「ただ被ればいい」というものではありません。サイズが合っていないとプレー中にズレて視界を塞ぎ、逆に危険な状態になることもあります。ここでは失敗しない選び方のポイントを紹介します。
正しい頭のサイズの測り方
購入前に必ずメジャーを使って頭の周囲を測りましょう。測る場所は、「眉毛の上」と「耳の上」を通る、頭の一番出っ張っているラインです。帽子を被る位置をイメージするとわかりやすいでしょう。
ネット通販で買う場合でも、可能であればスポーツショップで試着することをおすすめします。メーカーによって「Mサイズ」の基準が微妙に異なるため、実寸と着用感の確認は非常に大切です。
メーカーごとの特徴とフィット感
日本人の頭は「ハチが張っている(横幅が広い)」傾向があります。そのため、海外ブランドのものはサイズが合っていても横幅がきつく感じることがあります。国内メーカーであるミズノやセプターなどは、日本人の頭の形に合いやすい設計になっていることが多いです。
一方、カンタベリーやギルバートなどの海外ルーツのブランドも、日本国内で販売されているモデルは日本人向けに改良されているものが多いですが、試着してこめかみ付近の圧迫感を確認すると安心です。
通気性と軽量性のチェックポイント
ラグビーは夏場でも行われるスポーツです。頭部には熱がこもりやすいため、通気性は快適にプレーするための重要な要素です。ヘッドギアの表面に空気を通すための穴(ベンチレーション)が適切に配置されているか確認しましょう。
また、重さも重要です。最近のモデルは非常に軽量化されていますが、あまりに重厚なものは首への負担になります。手に持った時に「軽い」と感じるもの、そしてクッションがブロック状に分かれていて頭の形に馴染みやすいもの(ハニカム構造など)がおすすめです。
試合に出るなら必須!ワールドラグビー認定タグとルール

練習で使う分にはどんな帽子でも自由ですが、公式戦に出場するためには厳格なルールがあります。これを知らずに購入してしまうと、「試合で使えない」という事態になりかねませんので注意が必要です。
「World Rugby」のタグがないと試合に出られない?
公式戦で使用できるヘッドギアには、必ず「World Rugby(ワールドラグビー)」の認定タグが付いている必要があります。これは、その製品が国際的な安全基準を満たしているという証明です。
通常、ヘッドギアの後頭部や内側に、白や銀色のタグが縫い付けられています。以前は「IRB」という名称でしたが、現在は「World Rugby」に変更されています。ショップで販売されているラグビー用ヘッドギアのほとんどには付いていますが、購入時に必ずタグの有無を確認してください。
年代別・カテゴリ別の着用義務について
日本国内のルールでは、カテゴリによって着用の義務が異なります。
・高校生以下(中学生・ラグビースクール含む): 試合での着用が義務付けられています。
・大学生・社会人・プロ: 着用は任意です。
高校生までは安全面を最優先するため、必ず着用しなければ試合に出場できません。大学生以上になると個人の判断に委ねられますが、怪我の予防として着用し続ける選手も多くいます。
学生ラグビーにおける色の規定と注意点
特に高校ラグビーなどでは、ヘッドギアの「色」にも規定や推奨がある場合があります。基本的には「白」が推奨されるケースが多いです。これは、頭から出血した際に審判やドクターがすぐに気づけるようにするためと言われています。
最近ではチームカラーに合わせた色も認められるようになってきましたが、派手すぎる蛍光色やデザインは、大会規定やユニフォーム規定で禁止される場合があります。所属するチームや部活の監督に、購入可能な色を事前に確認するのが無難です。
人気メーカーの特徴を徹底比較!カンタベリーやミズノなど

ラグビー用品売り場に行くと、いくつかの主要メーカーが並んでいます。それぞれのブランドには特徴がありますので、自分に合ったものを見つける参考にしてください。
王道を行くカンタベリー(Canterbury)
ラグビーといえばカンタベリー、というほど有名なニュージーランド発祥のブランドです。特徴は、独自の「ハニカム(蜂の巣)構造」のクッションです。頭の形に柔軟にフィットしやすく、衝撃吸収性も抜群です。
デザインやカラーバリエーションも豊富で、初心者からトッププロまで最も多くの選手に愛用されています。迷ったらカンタベリーを選んでおけば間違いありません。
フィット感に定評があるミズノ(Mizuno)
日本の総合スポーツメーカーであるミズノのヘッドギアは、やはり日本人の頭の形を知り尽くしたフィット感が魅力です。側頭部が痛くなりにくく、包み込まれるような安心感があります。
また、汗をかいても乾きやすい素材を使用していたり、通気性を高める工夫がされていたりと、機能面でも非常に優秀です。部活動などで長時間練習する学生には特におすすめです。
世界的なシェアを誇るギルバート(Gilbert)
ラグビーボールの世界シェアNo.1を誇るイギリスのブランドです。ワールドカップなどの国際大会でも多くの選手が着用しています。立体成型のクッションが特徴で、頭部の保護性能が高いと評価されています。
デザインはシンプルで硬派なものが多く、海外の有名選手に憧れて選ぶプレーヤーも多いです。少しサイズ感が欧米寄りな場合があるため、試着は必須です。
個性的なデザインが光るインパクト(IMPACT)
オーストラリア発のブランドで、その名の通り「インパクト」のある派手な柄やデザインが最大の特徴です。炎の柄や国旗のデザインなど、他の人とは違う個性を出したい選手に人気があります。
もちろんWorld Rugby認定を受けており性能も確かですが、高校生の公式戦などでは規定により使えない柄の場合もあるため、主に練習用や、規定の緩い社会人・大学生プレーヤーに選ばれています。
臭い対策も完璧!ヘッドギアの正しい洗い方と手入れ

ヘッドギアを使っていると直面するのが「強烈なニオイ」問題です。頭は汗をかきやすく、スポンジ素材が汗を吸い込むため、放置すると雑菌が繁殖してしまいます。正しいお手入れで清潔に保ちましょう。
洗濯機はOK?手洗いが推奨?
基本的には「手洗い」が最も推奨されます。洗面器にぬるま湯と中性洗剤(おしゃれ着洗い用など)を入れ、優しく押し洗いをします。汚れがひどい場合は、30分ほどつけ置きしてから洗うと良いでしょう。
洗濯機を使う場合は、必ず「洗濯ネット」に入れてください。そのまま洗うと型崩れの原因になります。また、コースは「手洗いモード」や「ドライコース」などの優しい設定を選びましょう。
嫌なニオイを防ぐための乾燥方法
洗濯後の乾燥は非常に重要です。ここでやってはいけないのが「乾燥機」の使用です。ヘッドギアのクッション材(EVAフォームなど)は熱に弱く、乾燥機にかけると縮んだり硬くなったりして使い物にならなくなります。
必ず「風通しの良い日陰」で干してください。直射日光も素材の劣化を早める原因になります。生乾きはニオイの元凶ですので、内側までしっかり乾くように、逆さに吊るすなど工夫しましょう。どうしてもニオイが取れない場合は、重曹を溶かした水につけ置きするのも効果的です。
紐やベルクロ(マジックテープ)の劣化を防ぐコツ
洗濯をする際、あご紐のマジックテープ(ベルクロ)は必ず留めた状態で洗いましょう。開いたままだと、マジックテープがヘッドギアの生地や他の洗濯物を傷つけてしまいます。
また、後ろの調整紐も緩まないように軽く結んでおくと良いでしょう。長く使っていると紐が切れることがありますが、多くの場合は紐だけ交換することも可能です。日頃から紐の状態をチェックしておくと、試合直前のトラブルを防げます。
まとめ:自分に合ったラグビーヘッドギアで安全にプレーしよう
ラグビーのヘッドギアは、単なるファッションではなく、怪我から身を守るための重要な防具です。脳振盪を完全に防ぐ魔法のアイテムではありませんが、切り傷や耳の変形を防ぎ、恐怖心を和らげてくれる頼もしい相棒です。
記事のポイント
・ヘッドギアは主に「外傷(切り傷・耳)」を防ぐために着用する。
・高校生以下は公式戦での着用が義務付けられている。
・購入時は「World Rugby」の認定タグがあるかを必ず確認する。
・サイズ選びはメジャーで実測し、できれば試着してフィット感を確かめる。
・熱に弱いため乾燥機はNG。手洗いと陰干しで清潔さを保つ。
自分にぴったりのヘッドギアを見つけることは、安全で楽しいラグビーライフの第一歩です。メーカーごとの特徴やサイズ感をしっかり確認し、練習でも試合でも自信を持ってプレーできる準備を整えてくださいね。

