ラグビーの試合を観戦していると、選手同士が激しくぶつかり合うシーンに目を奪われますよね。でも、その直後に審判の笛が鳴り、「今の反則は何?」「なぜプレーが止まったの?」と疑問に思うことはありませんか?
実は、ラグビーのルールを理解する上で最も重要なカギとなるのが、「タックル成立の条件」です。「タックルが決まった」と審判が判断する瞬間、そこには明確なルールが存在します。この瞬間を境に、選手たちには全く新しい「義務」が発生し、それを守らなければ即座に反則となってしまうのです。
この記事では、「タックル成立 条件」というキーワードで検索したあなたが、ラグビーの攻防をより深く、クリアに楽しめるように、その定義から成立後のルール、よくある反則までをやさしく丁寧に解説します。初心者の方も、プレー経験者の方も、この基本をマスターしてラグビー観戦をさらに楽しみましょう。
まずは結論!タックル成立の条件

ラグビーにおいて「タックル」とは単に相手にぶつかることではありません。競技規則(ルールブック)には、タックルが成立したとみなされるための明確な定義があります。審判はこの定義に基づいて、一瞬のプレーを判断しています。
タックルが成立するためには、大きく分けて以下の3つの要素が同時に満たされる必要があります。これらが揃った瞬間、プレーのフェーズは「オープンプレー」から「タックル」へと移行します。
条件1:ボールキャリアーが「捕まっている」こと(Held)
最初の条件は、ボールを持っている選手(ボールキャリアー)が、相手選手(タックラー)によって捕まえられていることです。これをルール用語では「ホールド(Held)」と言います。
「捕まっている」という状態は、単に体に触れているだけでは不十分です。タックラーが腕を使って相手の体をバインド(しっかりと掴む、または巻き付ける)している必要があります。もし、相手の体に肩をぶつけただけで、腕を回していなければ、それは「タックル」ではなく「チャージ」や、場合によっては「ノーバインドタックル」という反則になる可能性があります。
この「ホールド」が継続していることが重要です。ボールキャリアーが倒れる瞬間まで、タックラーがしっかりと相手を掴んでいなければなりません。もし空中で接触しても、着地する前に手を離してしまえば、それはタックル成立とはみなされないケースが多いのです。
条件2:ボールキャリアーが「地面についている」こと(Brought to Ground)
2つ目の条件は、ボールキャリアーが地面に倒されていることです。これを「ブリング・トゥ・グラウンド(Brought to Ground)」と呼びます。どんなに強く抱きつかれていても、ボールキャリアーが立ったまま耐えている状態では、タックルは成立していません。
では、「地面についた」とは具体的にどのような状態を指すのでしょうか。ルール上は、両足の裏以外の部分が地面についた瞬間を指します。最もわかりやすいのは、背中や横腹が地面につく「完全に倒れた」状態ですが、それだけではありません。
例えば、片膝(ひざ)が地面についただけでも「地面についた」とみなされます。 また、お尻をついて座り込んだ状態(シッティング)も同様です。さらに言えば、すでに地面に倒れている他の選手の上に重なった場合も、地面についたことと同じ扱いになります。この「膝がついた瞬間」を見逃さないことが、タックル成立を見極めるポイントです。
条件3:相手プレーヤーによる行為であること
3つ目は、その転倒が「相手プレーヤー(タックラー)によって引き起こされたもの」であるという点です。これは当たり前のようでいて、非常に重要な条件です。
もし、ボールを持った選手が、誰にも触れられずに自分の足がつまづいて転んだとします。この場合、地面には倒れていますが、「相手に捕まって」はいません。したがって、タックルは成立していません。この選手は、すぐに起き上がって走り出すことができます。
また、相手選手にジャージを少し引っ張られたものの、その手がすぐに離れ、その後にバランスを崩して倒れた場合も判断が分かれます。倒れた瞬間に相手に「ホールド」されていなければ、それはタックル成立とはなりません。あくまで、「相手に捕まえられたまま倒れる」あるいは「倒された後も捕まえられている」という一連の流れが必要なのです。
これって成立?不成立?よくある勘違いパターン

タックルの基本条件は理解できても、実際の試合はハイスピードで動いており、微妙なケースがたくさん起こります。「今の倒れ方はタックル?それとも違うの?」と迷いやすいシチュエーションをいくつか挙げて、その判定基準を詳しく解説します。
膝がつかずに捕まっている場合(モールへの移行)
ボールキャリアーが相手にガッチリと捕まえられていますが、強靭な足腰で耐え、膝を地面につけずに立ったままの状態が続くことがあります。この時、味方の選手が援護に入ってきて体が密着し、塊となって押し合いが始まると、それは「タックル」ではなく「モール」という別のプレーになります。
タックル成立には「地面につくこと」が必須ですが、モールの成立条件は「立ったまま」であることが前提です。もし、タックルしようとして捕まえたけれど倒しきれず、そのまま押し合いになった場合は、レフリーは「モール!」とコールすることがあります。一度モールが成立すると、ディフェンス側はわざと崩すことができなくなります。
観戦においては、「膝がついたか、ついていないか」が、その後のプレーがタックル後の攻防(ラック)になるか、押し合い(モール)になるかの運命の分かれ道となります。
捕まえられずにただ転んだ場合(スリップ)
雨の日や芝の状態が悪い時によくあるのが、ボールキャリアーが足を滑らせて一人で転んでしまうケースです。この場合、条件の1つ目「捕まっている(Held)」が満たされていないため、タックルは成立しません。
タックルが成立していないということは、その選手に「ボールを放さなければならない」という義務が発生しないことを意味します。つまり、転んだ選手は、倒れたままボールを持ち続けても反則(ノット・リリース・ザ・ボール)にはなりませんし、すぐにむっくりと起き上がって、そのままドリブルやランを再開しても良いのです。
ただし、転んでいる最中に相手選手がやってきて、倒れているその選手を押さえつけた(ホールドした)場合は、その瞬間に「タックル成立」となります。ですから、転んだ選手は相手が来る前に素早く起き上がるか、あるいは味方にパスをする判断が求められます。
タックラーが途中で手を離してしまった場合
ディフェンスの選手がボールキャリアーに飛びかかり、足首あたりに触れました。ボールキャリアーはバランスを崩して倒れましたが、倒れる直前にディフェンスの手は離れていました。このケースは非常に微妙ですが、厳密には「タックル不成立」と判定されることが多いです(タップタックルと呼ばれる足首への接触で、手が離れた場合など)。
しかし、現在の競技規則や実際のレフリングの解釈では、倒れた直後にタックラーが覆いかぶさるような体勢にあれば、一連の流れとしてタックル成立とみなすこともあります。重要なのは「コンテスト(ボールの争奪)」が公平に行われるかどうかです。
もし手が完全に離れていて、ボールキャリアーがフリーな状態で倒れたのであれば、彼はすぐに起き上がってプレーを続ける権利があります。逆に、少しでも接触が残っていたり、倒れた勢いでタックラーがまだ近くにいて影響を与えていたりする場合は、安全面も考慮してタックル成立として扱われることが一般的です。
ジャージーだけ掴んで倒れていない場合
相手のジャージーを掴んで引き倒そうとしているけれど、ボールキャリアーがまだ粘って倒れていない状態はどうでしょうか。これも条件2の「地面についていない」状態なので、タックルは未成立です。
この状態でレフリーが「タックル!」とコールすることはありません。このままボールキャリアーがジャージーを引きちぎるようにして前に進めばプレーは続行されます。逆に、ジャージーを掴んでいる選手がそのまま引きずられて地面に膝をついたとしても、ボールキャリアーが立っていればタックルではありません。
あくまで「ボールを持っている人が」地面につくことが条件です。ディフェンダーが何人ぶら下がっていても、ボールキャリアーが仁王立ちしていれば、それはまだインプレー(プレー継続中)なのです。これがラグビーのフィジカルバトルの面白さの一つでもあります。
タックル成立「後」が重要!選手に課される義務

「タックル成立」と判定された瞬間、そこにはラグビー独自の厳格なルールが発動します。このルールこそが、ラグビーの秩序と安全、そしてゲームのダイナミズムを支えています。選手たちには、「やってはいけないこと」と「やらなければならないこと」が同時に課されます。
タックラーの義務:すぐに離して退く(Release & Roll away)
相手を倒した選手(タックラー)には、タックル成立直後に最も重要な義務があります。それは、「ただちにボールキャリアーとボールを放すこと(リリース)」です。いつまでも相手を抱え込んでいてはいけません。
さらに、タックラーは倒れている場所から速やかに退かなければなりません。これを「ロール・アウェイ(Roll away)」と呼びます。倒れ込んだままでいると、攻撃側がボールを出そうとするのを邪魔することになるため、横に転がってでも、その場から離れなければなりません。
もし、タックラーがボールを奪い返したい(ジャッカルしたい)と思ったらどうすればいいのでしょうか?そのためには、一度完全に相手を放し、自分自身の足でしっかりと立ち上がってから、改めてボールに働きかけなければなりません。倒れたままボールに手を出すことは厳禁です。
タックラーの3大義務
1. 相手とボールをすぐに放す。
2. その場からすぐに離れる(転がる)。
3. ボールをプレーするなら、一度立ち上がる。
倒された選手の義務:ボールをすぐに手放す(Release or Place)
一方、タックルされて倒された選手(ボールキャリアー)にも義務があります。地面についた瞬間、彼はもうボールを持っていてはいけないのです。ただちにボールを「放す(リリース)」、「置く(プレース)」、あるいは「パスする」必要があります。
よく見られるのは、倒された瞬間に体をひねって、味方の方へボールを置く(プレースする)動作です。これにより、味方がそのボールを拾って攻撃を継続できます。この動作は「直ちに」行わなければなりません。
もし、倒された後もボールを胸に抱え込んだまま離さなかったり、一度動きが止まったのにもう一度這って前進しようとしたりすると、反則を取られます。倒されたら、潔くボールをゲームに還す。これがラグビーのフェアプレーの精神です。
周りの選手の義務:ゲートからの入場(Gate Entry)
タックルが成立した地点には、ボールを奪い合おうと両チームの他の選手(アライビングプレーヤー)が集まってきます。しかし、彼らはどこからでも入っていいわけではありません。
タックル地点には「ゲート」と呼ばれる仮想の入場門ができます。これは、倒れている選手とボールの領域の、自陣側の幅のことです。選手は必ず、自分のチームのゴールライン側(真後ろ)から、このゲートを通ってボールに働きかけなければなりません。
横から入ったり、相手側から回り込んで入ったりすると「オフサイド」や「サイドエントリー」という反則になります。このルールがあるおかげで、密集戦(ラック)がカオスにならず、一定の秩序を持って力比べができるようになっています。
ジャッカルを狙う選手の条件とタイミング
タックル成立直後、守備側にとって最大のボール奪取のチャンスが「ジャッカル」です。ジャッカルとは、タックラー以外の選手が、タックル直後のボールに手をかけて奪い取るプレーのことです。
ジャッカルを成功させるための条件は非常にシビアです。まず、タックラーではないため、タックル成立時に立っている必要があります。そして、ボールキャリアーが地面についた瞬間、誰よりも早く、かつ「ゲート」を通ってボールに到達しなければなりません。
さらに重要なのは、「自分の体重を自分の足で支えていること」です。相手に寄りかかったり、膝を地面についたりしてボールを触ると反則です。強靭な体幹で立ったまま、強烈な力でボールを引き剥がす。この一瞬の攻防こそが、現代ラグビーの見どころの一つです。
審判の笛が鳴る!タックル周辺のよくある反則

タックル成立条件とその後の義務がわかれば、試合中に頻繁に起こる反則の意味がすぐに理解できるようになります。ここでは、タックル周りでよく耳にする反則名を解説します。
ノット・リリース・ザ・ボール
「ノット・リリース・ザ・ボール(Not release the ball)」は、タックルされた選手がボールを離さなかった時に取られる反則です。観客席からもよく「放せ!」という声が飛びますが、まさにその状態です。
守備側の選手が素晴らしいジャッカルを決めてボールを持ち上げようとしているのに、攻撃側の倒された選手がボールを抱え込んで離さないケースが最も典型的です。審判は「守備側の選手が正当にボールを奪える状態なのに、攻撃側が妨害した」と判断し、守備側にペナルティを与えます。
ノット・ロール・アウェイ
「ノット・ロール・アウェイ(Not roll away)」は、タックラーがタックル成立後に邪魔な位置に残ってしまった反則です。タックルを決めたのは良いものの、そのまま相手の上に覆いかぶさっていたり、攻撃側のボール出しのコースに寝転がっていたりすると、この反則を取られます。
レフリーはよく「ロールアウェイ!」「ロール!ロール!」と叫んで選手に退くように促します。それでも退かない場合や、意図的に時間を稼ごうとした場合に笛が吹かれます。
ホールディング
「ホールディング(Holding)」は、タックル成立後、タックラーが相手を放さずに捕まえ続けている反則です。倒された選手がボールを置いて味方に渡したいのに、タックラーが腕を絡めたままでその動作をさせない場合などに適用されます。
タックル成立の条件「Held」は必要ですが、成立した瞬間に「Release」しなければならない。この切り替えが遅れるとホールディングとなります。
ハイタックル(危険なタックル)
これはタックルの成立条件以前の問題として、安全に関わる重要な反則です。「ハイタックル(High Tackle)」は、相手の肩のラインより上にタックルをした場合に取られます。首や頭への接触は非常に危険だからです。
最近のルールでは、頭部への接触は特に厳しく判定されます。たとえ最初は肩に当たっていても、その腕がずり上がって首に入れば反則です。意図的でなくとも、結果として危険なプレーになれば、イエローカード(シンビン)やレッドカード(退場)の対象となることもあります。
メモ:タックルの高さについては年々ルールが厳格化されています。選手は常に低い姿勢で、腰から下を狙うように指導されています。
安全なタックルとコーチングのポイント

タックルはラグビーの華ですが、同時に最も怪我のリスクが高いプレーでもあります。正しい「タックル成立」を目指すことは、実は安全にプレーすることと直結しています。ここでは、プレーヤーや指導者、そして観戦者が知っておくべき安全のポイントを紹介します。
踏み込みとバインドの重要性
良いタックル、つまり確実に「成立」させられるタックルは、踏み込みが鋭いです。相手の懐(ふところ)深く足を踏み入れることで、強い力で当たることができます。そして何より重要なのが「バインド(相手を腕で束ねる)」です。
手だけで行こうとすると弾かれますし、肩だけで行くとバインド不足で反則になりがちです。しっかりと踏み込み、肩を当て、同時に腕を回してパックする。これができれば、相手は確実に「Held」の状態になり、安全に「Brought to Ground」へと持ち込めます。
頭の位置と怪我防止(Head position)
タックラー自身が怪我をしないために最も大切なのが「頭の位置(Head Position)」です。基本は、相手の進行方向の後ろ側(お尻側)に頭を入れることです。
もし相手の膝や腰の前側に頭を入れてしまうと、相手の固い骨や走ってくる膝と頭が衝突し、脳震盪などの重大な事故につながる恐れがあります。「ヘッド・ビハインド(頭は後ろ)」や「チーク・トゥ・チーク(頬をお尻につけるイメージ)」という合言葉で指導されることが多いのはこのためです。
審判が「タックル!」とコールする瞬間
試合中、レフリーが大きな声で「タックル!」と叫ぶのを聞いたことがあるでしょうか?これは、「今、タックル成立条件が満たされたぞ!全員ルールに従え!」という合図です。
この声が聞こえたら、タックラーは手を放し、ボールキャリアーはボールを置かなければなりません。観戦時は、このレフリーの声に耳を傾けてみてください。「タックル!」の声の直後にボールが出てこなければ、すぐに笛が鳴るはずです。レフリーとのコミュニケーションを見るのも、ラグビー通の楽しみ方です。
まとめ
今回は「タックル成立 条件」というキーワードをもとに、ラグビーの核心部分であるタックルのルールについて解説してきました。
記事のポイントを振り返ってみましょう。
タックル成立の3条件
1. ボールキャリアーが捕まっている(Held)
2. ボールキャリアーが地面についている(Brought to Ground / 膝がつくだけでもOK)
3. 相手プレーヤーによって行われている
成立後の義務
・タックラーはすぐに放して退く。
・倒された選手はすぐにボールを放す。
・他の選手はゲートから入る。
この「成立の瞬間」と「その後の義務」という視点を持つだけで、ラグビー観戦の解像度は一気に上がります。なぜ選手が必死に体を転がして退くのか、なぜ倒れた瞬間にボールを突き出すように置くのか。その一つひとつの動きに、ルールに基づいた理由があることがわかるはずです。
ぜひ次の試合観戦では、選手が倒れた瞬間に注目してみてください。「膝がついた!タックル成立!」「リリースしたか?」と心の中で実況できるようになれば、あなたはもう立派なラグビー通です。


