ラグビーの試合を観ていると、レフェリーが笛を吹きながら様々なジェスチャーをしていることに気づきます。「今の笛は何?」「どっちのボールになったの?」と疑問に思ったことはありませんか?ラグビーには「レフェリー シグナル」と呼ばれる共通のサインがあり、これを理解することで、試合の流れや判定の理由が一瞬でわかるようになります。初心者の方にとっては、複雑に見えるルールを解き明かすための最強のツールです。
この記事では、試合で頻繁に見かける基本的なシグナルから、知っていると通ぶれるマニアックなものまで、詳しく解説していきます。シグナルの意味を知ることで、選手たちが何を狙っているのか、次にどんなプレーが起こるのかを予測できるようになり、ラグビー観戦の面白さが格段にアップします。ぜひこの一覧を参考に、試合会場やテレビの前でレフェリーの動きに注目してみてください。
基本中の基本!試合進行に関するレフェリー シグナル

まずは、どの試合でも必ず目にする、試合の進行や得点に関わる基本的なシグナルから押さえていきましょう。これらを知っているだけで、今どちらのチームが攻めているのか、点が入ったのかどうかがすぐに分かります。
トライ(Try)
ラグビーで最も盛り上がる瞬間、それがトライです。攻撃側の選手が相手のインゴールエリアにボールを地面につける(グラウンディングする)と、レフェリーは笛を吹き、片手を真上に高く突き上げます。これがトライ成立の合図です。
レフェリーがトライの地点を確認し、自信を持って手を挙げた瞬間、スタジアムは大歓声に包まれます。もしレフェリーがトライかどうか確信が持てない場合は、手を挙げずにTMO(ビデオ判定)を要求することになります。観戦中は、選手が飛び込んだ後にレフェリーの手が挙がるかどうかに注目しましょう。手が挙がれば5点が入り、その後のコンバージョンキックへと進みます。
ペナルティキック(Penalty Kick)
重い反則があった場合に出されるシグナルです。レフェリーは笛を強く吹き、反則を犯さなかったチーム(ボールをもらう側)の陣地の方へ向かって、腕を斜め上(約45度)にピンと伸ばします。同時に、足を少し開き、堂々とした姿勢をとることが多いです。
このシグナルが出ると、反則をもらったチームには「タッチキックで陣地を挽回する」「ゴールキックで3点を狙う」「スクラムを選択する」「タップキックで速攻を仕掛ける」といった選択肢が与えられます。観戦時は、レフェリーの腕が指している方向のチームがチャンスを得たと判断してください。「どちらのチームの反則か」が最もわかりやすいシグナルの一つです。
フリーキック(Free Kick)
ペナルティよりも軽い反則に対して与えられるのがフリーキックです。レフェリーは腕を肘で直角(90度)に曲げて上げます。ペナルティの「斜め上」とは異なり、「カギ型」に腕を曲げるのが特徴です。
フリーキックの場合、直接ゴールを狙うことはできません。スクラムでの反則(アーリープッシュなど)や、ラインアウトの時間遅延などでよく見られます。以前はここからスクラムを選択することもできましたが、近年のルール改正でタップキックやハイパントキックで再開することが増えています。レフェリーの腕が曲がっていたら「軽い反則だな」と思い出してください。
アドバンテージ(Advantage)
ラグビー特有のルールで、反則があっても、反則された側がボールを持って有利に攻撃できている場合は、すぐに笛を吹かずにプレーを続行させます。この時、レフェリーは腕を水平に前に突き出します。
「アドバンテージ」のコールと共に腕が出ている間は、攻撃側にとって「ボーナスタイム」のようなものです。もし攻撃が失敗しても、反則があった地点に戻ってペナルティやスクラムから再開できます。そのため、選手はこのシグナルが出ると、普段はしないような思い切ったパスやキックパスを狙うことがあります。観戦中はレフェリーの腕が下がる(アドバンテージ解消)まで、大胆なプレーに期待しましょう。
ボールの争奪戦!タックル周辺でのレフェリー シグナル

ラグビーで最も反則が起きやすいのが、タックル成立後のボールの奪い合い(ブレイクダウン)です。ここでは、攻守が激しく入れ替わる場面でよく見るシグナルを紹介します。
ノット・リリース・ザ・ボール(Not Releasing the Ball)
タックルされて倒れた選手は、すぐにボールを手放さなければなりません。しかし、ボールを抱え込んで相手に渡さないようにするとこの反則になります。レフェリーは両手を胸の前で抱えるようなジェスチャーをします。
守備側の選手が「ジャッカル(ボールを奪うプレー)」に入った際、攻撃側の選手がボールを離さない場面でよく取られます。守備側のファインプレーの結果と言えるでしょう。この反則が起こると、守備側が一気に攻撃権を奪い返す大チャンスになります。「ノット・リリース!」というコールと共に、ジャッカルを決めた選手が仲間から称賛されるシーンは必見です。
ノット・ロール・アウェイ(Not Rolling Away)
タックルをした選手(タックラー)は、すぐにその場から離れて、攻撃側の邪魔にならないようにしなければなりません。倒れたまま相手のプレーを妨害するとこの反則になります。レフェリーは腕をグルグルと回すようなジェスチャーをして、転がって退くべきだったことを示します。
密集戦でボールが出にくい時、レフェリーがこのシグナルを出すのをよく見かけます。タックラーも疲労や密集状態で動けないことがありますが、ルール上は素早く退避しなければなりません。この反則からペナルティキックとなり、試合の流れが大きく変わることも多い重要な反則です。
ハンド(Hands in the ruck)
ラック(地面にボールがある密集状態)が形成された後は、手を使ってボールを扱ってはいけません。守備側の選手が手でボールをかき出そうとしたり、抑えつけようとしたりするとこの反則になります。レフェリーは地面に向けて手でボールを扱うような動作をします。
ジャッカルを狙った選手が、自分の体重を支えきれずに手をついてしまったり、ラック形成後に無理に手を出したりした時に取られます。観客席からは見えにくい細かいプレーですが、レフェリーは「ノーハンド!」と声をかけながら厳しくチェックしています。正々堂々と足でボールをまたいで奪うのが正しいラックの技術です。
オーバー・ザ・トップ(Over the Top)
ラックにおいて、倒れこんで相手側のボールが出るのを防ぐ反則です。レフェリーは手のひらを下にして、何かを乗り越えるような動作、あるいは倒れ込む動作を示します。現代ラグビーでは「シーリングオフ(Sealing Off)」とも呼ばれ、攻撃側がボールを守るためにわざと覆いかぶさる行為も厳しく取られます。
選手は立った状態でプレーしなければならないのがラグビーの原則です。疲れてくるとどうしても倒れこんでしまいがちですが、これによってボールの展開が遅れるため、スピーディーな試合展開を守るためにレフェリーは目を光らせています。このシグナルが出たら「立ってプレーしていない」と判断されたと考えてください。
ミスやオフサイド!ハンドリングと位置取りのシグナル

ボールを前に落としたり、前に投げたりするハンドリングエラーや、プレーしてはいけない位置にいるオフサイド。これらは初心者でも比較的わかりやすい反則です。
ノックオン(Knock-on)
ボールを前に落としてしまう、最も一般的なミスです。レフェリーは片方の手のひらを、もう片方の手で軽く叩くジェスチャーをします。叩く動作が「ボールが当たって前に落ちた」ことを表現しています。
パスを取り損ねたり、タックルを受けてボールをポロリと落としたりした時に発生します。故意ではない軽微な反則なので、相手ボールのスクラムから再開されます。雨の日などボールが滑りやすい状況では頻発します。観戦中に「あっ、落とした!」と思ったら、すぐにレフェリーの手元を見てみましょう。このシグナルが出ているはずです。
スローフォワード(Forward Pass)
ボールを自分より前に投げてしまう反則です。レフェリーは両手を胸の前で、パスをするように前方へ動かすジェスチャーをします。ラグビーではボールは後ろにしかパスできないため、勢い余って前に投げてしまうとこの反則になります。
特に素晴らしいランで抜け出した後に、最後のパスがスローフォワードと判定されると、トライが取り消しになり会場からは大きなため息が漏れます。判定の基準は「手の動きが相手ゴール方向に向かっているか」です。ボールが慣性で前に流れるのはOKですが、投げた瞬間の手の方向が厳しくチェックされます。
オフサイド(Offside)
プレーに参加してはいけない位置(オフサイドラインの前)にいる選手が、プレーに関与した時の反則です。レフェリーは片手を顔の横あたりで、後ろに払うような動作をします。「後ろに下がりなさい」という意味が込められています。
ディフェンスラインが飛び出しすぎたり、キックを蹴った味方選手より前でボールを追いかけたりした場合に取られます。オフサイドは重い反則(ペナルティ)なので、一気に自陣深くへ攻め込まれる原因になります。初心者にはラインが見えにくいかもしれませんが、レフェリーが手を横に振る動作を見たら「待ち伏せ禁止エリアにいたんだな」と理解しましょう。
インテンショナル・ノックオン(Intentional Knock-on)
相手のパスを片手で叩き落とすなど、故意にノックオンをしたとみなされる反則です。レフェリーはノックオンのシグナル(手を叩く)を大きく、強調して行ったり、さらにペナルティのシグナル(腕を斜め上に上げる)を続けたりします。
ただのノックオンはスクラムですが、これが「わざと」と判断されるとペナルティキックになります。さらに、トライになりそうな決定的なチャンスをこれで阻止したと判断されると、イエローカード(シンビン)が出ることもあります。「インターセプト(パスカット)」を狙ったのか、「妨害」だったのか、レフェリーの判断が試合を左右する緊張の瞬間です。
安全第一!危険なプレーに対するレフェリー シグナル

ラグビーは激しいコンタクトスポーツですが、選手の安全を守るためのルールは非常に厳格です。危険なプレーには厳しいシグナルが出されます。
ハイタックル(High Tackle)
相手の肩のラインより上にタックルをする反則です。特に首や頭への接触は厳しく禁止されています。レフェリーは自分の首の前で、手のひらを横に切るような動作をします。
首や頭への衝撃は脳震盪など重大な怪我につながるため、現代ラグビーでは最も厳しく取り締まられる反則の一つです。意図的でなくても、結果的に腕が首に入ってしまえば反則となります。程度によってはTMO(ビデオ判定)が行われ、イエローカードやレッドカードの対象になる可能性が高いプレーです。
ネックロール(Neck Roll)
密集戦で相手の首に腕を巻き付けて引き剥がす行為です。レフェリーは首を掴んでひねるような動作、またはハイタックルと同様に首を示す動作をします。近年、安全面から非常に厳しくジャッジされるようになっています。
ジャッカルに入っている相手を排除しようとして、首を掴んで強引にどかそうとするとこの反則になります。首への負荷は非常に危険です。「相手を排除したい」という焦りが生む反則ですが、観戦時は選手の安全を守るための重要なジャッジとして注目してください。
ノーボールタックル(Early Tackle / Late Tackle)
ボールを持っていない選手に対するタックルです。ボールをもらう前(アーリータックル)や、パスやキックをした後(レイトタックル)にぶつかると反則になります。レフェリーはボールがないことを示すように両手を広げたり、衝突する動作をしたりします。
無防備な選手へのタックルは大きな怪我につながります。特にキッカーが蹴った直後のレイトタックルは危険です。この反則が起こると、ボールが落ちた地点(大きく陣地を挽回された地点)でのペナルティキックになることもあり、戦術的にも大きな痛手となります。
ショルダーチャージ(Shoulder Charge)
腕を回さずに、肩から相手にぶつかるタックルです。ラグビーのタックルは必ず「相手を腕でバインド(掴む)」しなければなりません。レフェリーは片方の腕を脇に密着させ、肩をぶつけるような動作をして説明します。
まるでプロレスの技のような体当たりは、相手に強烈な衝撃を与えるため禁止されています。素晴らしいヒットに見えても、レフェリーの手が肩を叩くジェスチャーをしていれば、それは「バインドしていない」という反則です。安全なタックルの技術が求められる場面です。
スクラムとラインアウト!セットプレー時のシグナル

試合再開の起点となるスクラムやラインアウト。ここでは専門的なシグナルが多く登場しますが、代表的なものを覚えておくと「なぜ組み直しになったのか」が分かります。
スクラム(Scrum)
ノックオンなどの軽い反則の再開方法です。レフェリーは笛を吹き、ボールを入れるチームの方へ向かって、腕を水平に低く指します。
スクラムを組む際、レフェリーは「クラウチ(しゃがんで)」「バインド(掴んで)」「セット(当たれ)」という3つのコールをかけます。このリズムに合わせてフォワード8人が塊となります。観戦時はこの掛け声に合わせて緊張感が高まります。最近は安全のために組むまでのプロセスが慎重に管理されています。
コラプシング(Collapsing)
スクラムやモールを故意に崩す反則です。レフェリーは両手を合わせ、下に押し下げるような動作をします。「崩したでしょ」という明確なジェスチャーです。
スクラムで押されたチームが耐え切れずに膝をついたり、わざと崩して押し込まれるのを防ごうとしたりすると取られます。非常に危険な行為なのでペナルティとなります。スクラムが崩れた直後、レフェリーがどちらのチームにこのジェスチャーをするかが、フォワード戦の優劣を見るポイントになります。
アーリープッシュ(Early Push)
レフェリーがボールの投入を合図する前に、フライングで相手を押してしまう反則です。フリーキックのシグナル(腕を直角に曲げる)が出されることが多いです。
スクラムは「静止」してから押し合うのがルールです。気合が入りすぎて先に押してしまうと、相手にフリーキックを献上してしまいます。せっかくのスクラムのチャンスを無駄にしてしまうため、メンタルコントロールが問われる場面です。
ノットストレート(Not Straight)
ラインアウトやスクラムへのボール投入が、真っ直ぐに入らなかった場合の反則です。レフェリーは片手を上げて、蛇行するような(曲がった)ジェスチャーをします。
ボールは両チームの真ん中に公平に入れなければなりません。味方の方へ投げすぎると反則になります。特に風が強い日のラインアウトではスロワー(投げ手)が苦労する場面です。これにより相手ボールのスクラムやラインアウトに変わってしまいます。
まとめ:レフェリー シグナル一覧を理解してラグビーをもっと楽しもう
ここまで、ラグビーの試合で使われる主なレフェリー シグナルを紹介してきました。最初は「腕を上げたらペナルティ」「真上ならトライ」といった基本的なものから覚えるだけで十分です。
シグナルを理解することの最大のメリットは、試合の「ストーリー」が見えてくることです。「なぜ今、相手ボールになったのか?」「なぜ観客がどよめいたのか?」その答えはすべてレフェリーのジェスチャーの中にあります。例えば、激しい攻防の中でレフェリーがアドバンテージの腕を出した瞬間、「ここからリスキーなパスが見られるかもしれない!」と期待できるようになれば、あなたはもう立派なラグビー通です。
観戦を楽しむためのステップアップ
1. まずは「トライ」と「ペナルティ」の形を覚える。
2. 次に「ノックオン」と「スローフォワード」のジェスチャーを覚える。
3. 慣れてきたら、密集戦の「ノット・リリース」や「オフサイド」に注目する。
4. 最後に、レフェリーごとの「コールの癖」や「ジェスチャーの特徴」を楽しんでみる。
次回の観戦では、ぜひ選手だけでなくレフェリーの動きにも注目してみてください。言葉がわからなくても、ジェスチャーだけで世界中のラグビーファンと興奮を共有できるのが、このスポーツの素晴らしいところです。このシグナル一覧が、あなたのラグビーライフをより豊かにする手助けになれば幸いです。



