ラグビーの試合において、ゴール前で相手にラインアウトモールを組まれたとき、ディフェンス側は非常に大きなプレッシャーを感じます。「このまま押し込まれてトライを奪われるのではないか」という不安は、選手だけでなく見守る観客にも伝わるものです。しかし、モールは決して止められない無敵の戦術ではありません。正しい知識と技術を持っていれば、相手のモールを合法的に崩したり、前進を完全に食い止めたりすることが可能です。
ここで重要になるのが、「いかにして反則(ペナルティ)を犯さずに止めるか」という点です。ラグビーには「コラプシング」という厳格な反則があり、意図的にモールを崩す行為は厳しく罰せられます。ペナルティを取られれば、さらなるピンチを招くだけでなく、シンビン(一時的退場)のリスクさえあります。そのため、ルールを正しく理解し、審判に認められるクリーンな方法で対抗することが求められます。
この記事では、ラグビー初心者から中級者のプレーヤー、そして戦術を深く知りたいファンの方に向けて、モールの合法的な崩し方や止めるためのディフェンス戦術をやさしく丁寧に解説します。サック、ドライブ、アンプレアブルといった具体的なテクニックから、チームとしての連携方法まで、明日からの練習や観戦に役立つ情報を網羅しました。ぜひ最後まで読んで、モールディフェンスの奥深さに触れてみてください。
ラグビーのモール崩し方とは?基本ルールとコラプシングの境界線

モールを止める方法を学ぶ前に、まずは「モールとはどのような状態か」そして「やってはいけない崩し方とは何か」を正しく理解する必要があります。ラグビーのルールは非常に細かく、特に身体接触が激しいモール周辺の攻防は、レフリーによって厳格に判定されます。意図的な反則はチームを危険にさらすため、ルールの境界線を明確にしておくことが、優れたディフェンダーへの第一歩です。
モールが成立する条件と定義を理解する
ラグビーにおける「モール」とは、ボールを持ったプレーヤーを中心に、お互いのチームから少なくとも1人ずつ、合計3人以上のプレーヤーが立った状態で身体を密着させている状態を指します。この「立った状態で」というのが非常に重要で、膝が地面についてはならず、全員が足で立って押し合っている必要があります。
一般的に、ラインアウトからボールをキャッチした選手が着地し、その周りに味方が集まって「核」を作り、そこに相手ディフェンスが接触することでモールが形成されます。レフリーが「モール!」とコールした瞬間から、その密集戦にはモール特有のルールが適用されます。このコールがかかる前であれば、それは単なるタックルの局面であったり、オープンプレーの一部とみなされます。
モールが成立すると、オフサイドラインがモールの最後尾に設定されます。ディフェンス側はこのラインよりも後ろから参加しなければならず、横から入ったり、潜り込んだりすることは禁じられます。まずは「レフリーがモールと認定したかどうか」を常に意識し、その瞬間に頭を切り替えることがディフェンスの出発点となります。
意図的に崩す「コラプシング」は重い反則
モールディフェンスにおいて最も避けなければならないのが、「コラプシング(Collapsing)」という反則です。これは、形成されたモールを意図的に引き倒したり、崩したりする行為を指します。モールは互いが立った状態で力を競う場面であり、これを故意に潰すことは、下敷きになる選手の怪我につながる危険なプレーとみなされるからです。
具体的には、相手のジャージを掴んで下に引きずり下ろす、相手の足に自分の足をかけて転ばせる、あるいは自分から意図的に膝をついてモールごと倒れ込むといった行為が該当します。特にゴール前でディフェンス側がコラプシングを犯した場合、相手に「ペナルティトライ(認定トライ)」が与えられることも多く、さらにイエローカードが出される可能性も非常に高いです。
ディフェンス側としては、どれだけ押し込まれて苦しい状況であっても、決して自分から崩れ落ちてはいけません。最後まで立ったまま耐え抜くことが求められます。「崩したい」という気持ちは理解できますが、それはルール違反であり、チームに決定的な不利益をもたらす行為であることを肝に銘じておく必要があります。
合法的に崩すための条件とは何か
では、ルールを守りながらモールを「崩す」ことは不可能なのでしょうか。実は、いくつかの条件を満たせば、合法的にモールを解消させたり、崩れた状態に持ち込むことができます。その鍵となるのが「タイミング」と「ボールの行方」です。
一つの方法は、モールが完全に形成される「前」に崩してしまうことです。これは後述する「サック」という技術ですが、相手が塊になる一瞬の隙を突いてボールキャリアを倒す行為は、モール成立前であれば正当なタックルとして認められます。あくまで「モールになる前」であることがポイントです。
また、モールが自然に崩れる場合もあります。例えば、地面が滑りやすかったり、押し合う力のバランスが崩れて双方が倒れてしまった場合は、コラプシングとは見なされず、ボールがどちらにあるかによってスクラムでの再開となります。重要なのは、「崩そうとする意図」が見えないことです。正当に押した結果としてバランスが崩れるのと、引き倒すのでは、レフリーの心証も判定も全く異なります。
レフリーが見ているポイントを知る
モールディフェンスを成功させるには、レフリーがどこに注目しているかを知ることも大切です。レフリーは主に、モールの「入り方」と「崩れ方」を見ています。ディフェンス側の選手が、正しく最後尾から真っ直ぐに参加しているか(オフサイドではないか)、そして不自然な動きでモールを落としていないかを監視しています。
もしディフェンス側の選手が、相手のジャージを上から下に引っ張るような動作をすれば、即座にコラプシングを取られるでしょう。逆に、下から上にかき上げるようにバインドしていたり、背筋を伸ばして耐えている姿勢を見せれば、もしモールが崩れたとしても「アクシデンタル(偶発的)」と判断されやすくなります。
また、レフリーは「ボールがどこにあるか」も常に探しています。ボールが動かなくなって停滞した場合、レフリーは攻撃側に「ユーズイット(ボールを使いなさい)」と声をかけます。ディフェンス側はこのコールを聞くために、無言で耐えるのではなく、ルールを守っていることを姿勢でアピールし続ける必要があります。審判を味方につけるようなクリーンなプレーこそが、最強のディフェンスと言えるのです。
モールを組ませない「サック」の技術とタイミング

モールディフェンスにおいて、最も効果的かつリスクが少ないのは、そもそも「モールを組ませない」ことです。そのための代表的な技術が「サック(Sack)」です。これはラインアウトからボールをキャッチした相手選手が着地したその瞬間に、タックルを見舞って地面に倒してしまうプレーです。成功すれば相手の攻撃プランを根底から崩すことができますが、失敗すれば反則のリスクもある高度な技術です。
サックとは?着地と同時に倒す技術
サックとは、ラインアウトでジャンプしてボールを捕った相手選手(ジャンパー)が、地上に降りてきた瞬間を狙ってタックルし、モールが形成される前に倒してしまうプレーのことです。「袋(Sack)に入れるように捕まえる」ことからこの名がついたとも言われています。
通常、ラインアウトからモールを組む場合、ジャンパーは着地した後に味方のサポートプレーヤー(リフターなど)に守られるようにして身体を固めます。サックはこの「味方が固まって壁を作る」よりも早く、ジャンパーの体勢が不安定な着地の一瞬を狙います。ジャンパーが地面に膝をついてしまえば、その時点でプレーは「タックル成立」となり、相手はボールを離さなければなりません。
これにより、相手が意図していた「押し込むモール」は消滅し、ラック状態へ移行することになります。ディフェンス側としては、組織的な押し合いを回避し、ボール争奪戦に持ち込むことができるため、非常に大きなメリットがあります。
成功させるためのタイミングと低さ
サックを成功させるための最大の鍵は「タイミング」です。早すぎれば「空中にいる選手へのタックル」となり、非常に危険な反則としてペナルティやカードの対象になります。逆に遅すぎれば、すでに相手のサポート選手がバインドしてモールが成立してしまい、そこで無理に倒そうとするとコラプシングを取られます。
理想的なタイミングは、ジャンパーの両足が地面についたその瞬間です。ディフェンス側の選手は、相手のジャンプに合わせてタイミングを計り、着地の衝撃を吸収しようと膝が曲がる瞬間を狙って低く鋭く突き刺さります。狙う場所は、ジャンパーの太ももから膝周辺です。上半身を掴んでも、リフターに邪魔されたり、ジャンパーのパワーで耐えられたりするため、下半身を刈り取るようなイメージが有効です。
このプレーには勇気が必要です。相手のフォワード選手たちが密集してくる場所に、自ら飛び込んでいくからです。しかし、低く鋭いサックが決まれば、相手の出足を完全にくじくビッグプレーとなります。
ターゲットの絞り方と事前の分析
サックを狙う場合、闇雲に突っ込んでも成功率は上がりません。どの選手がボールを捕るのか、相手のラインアウトのサインをある程度予測する必要があります。事前に相手チームの映像を分析し、「相手のエースジャンパーは誰か」「モールを組むときはグラウンドのどのエリアを使うか」といった情報を頭に入れておくことが大切です。
また、ラインアウトでの立ち位置も重要です。サックを狙う選手(多くの場合はロックやフランカー)は、相手のジャンパーに対してすぐにアプローチできる位置にいなければなりません。相手がジャンプした瞬間に、「あ、これはいける」と判断して一歩踏み出す準備をしておく必要があります。
さらに、チーム全体での意思統一も欠かせません。「ここはサックを狙うぞ」というサインや掛け声があれば、周囲の選手もサック後のラックへの参加や、こぼれ球への反応を準備できます。個人の判断だけでなく、組織として狙いを定めることで、成功率は格段に向上します。
失敗したときのリスクと切り替え
サックはハイリスク・ハイリターンな戦術でもあります。もしタイミングが遅れてモールが成立してしまったのに、そのまま倒そうとし続けると、即座にコラプシングの反則を取られます。レフリーが「モール!」とコールしたら、サックの試みは失敗したと判断し、瞬時にプランを変更しなければなりません。
失敗した場合は、すぐに立ち上がってモールのディフェンスに参加するか、あるいは倒れずにそのまま相手を押し返す「ドライブ」に切り替える判断力が求められます。「倒せなかった」と呆然としていると、その隙に相手に押し込まれてしまいます。
また、サックに行った選手が地面に倒れている間、ディフェンスラインには一時的に穴が開くことになります。相手がモールを組まずに、サックに来た選手の裏のスペースへボールを展開してくる可能性もあります。サックを仕掛ける選手以外のメンバーは、常に「サックが失敗した場合」や「相手が別の動きをした場合」を想定して、二重三重の防御網を敷いておくことが重要です。
押し返す力で対抗する「ドライブ」でのディフェンス

サックが決まらず、相手にガッチリとモールを組まれてしまった場合、次に行うべきは正面からの力勝負です。これを「ドライブ」や「コンテスト」と呼びます。単に押されるのを耐えるのではなく、組織的な力で押し返し、相手の前進を阻む基本的なディフェンス方法です。
まとまって低く当たるパックの重要性
モールディフェンスにおいて、「個人の力」で対抗するのは不可能です。相手も複数人で結束して押してくるため、こちらも「パック(塊)」となって対抗しなければなりません。ディフェンス側のフォワード全員が、一つの生き物のように密着し、隙間なく固まることが最強の防御になります。
特に重要なのが「低さ」と「密着」です。相手よりも腰の位置を低くし、味方同士の肩と腰を隙間なく密着させることで、相手が入り込むスペースを消します。バラバラに当たってしまうと、その継ぎ目を狙われて簡単に割られてしまいます。掛け声をかけながら、全員で同じタイミングでヒットし、相手の出足を止めるインパクトを与えることが理想です。
相手の進行方向をずらすアングルチェンジ
真正面から受けても相手の勢いが勝っている場合、少し角度を変えて押すことで相手の力を逃がすテクニックがあります。これを「アングルチェンジ」や「ステアリング」と呼びます。相手の進行方向に対して、斜め方向から圧力をかけることで、モールをタッチライン側へ追いやったり、前進のベクトルをずらしたりします。
ただし、これには注意が必要です。あまりに露骨に横から力を加えたり、モールを回転(ホイール)させようとすると、反則を取られる可能性があります。あくまで「押し返す」動作の中で、力の加える方向を微調整するイメージです。チーム全体で「右にずらすぞ!」といった意思統一があれば、相手をコントロールしやすくなります。
先頭のボールキャリアへのプレッシャー
モールの中で、ボールを持っている選手(ボールキャリア)は通常、味方の最後尾に隠れています。しかし、ディフェンス側は常にこのボールキャリアを意識し、プレッシャーをかけ続ける必要があります。モールの先頭にいる相手選手(通称:矢尻)に対して強く当たり、自由に動かせないようにすることで、間接的にボールキャリアのコントロールを乱すことができます。
また、相手の結合が甘い瞬間を見計らって、合法的にモールの中心部へ「割って入る(スプリット)」ことも有効です。ボールキャリアに直接コンタクトできれば、ボールを奪い返したり、パスを出させなくしたりすることが可能になります。これもコラプシングにならないよう、立ったまま入り込む技術が求められます。
モールの「割れ目」を狙うスプリットの技術
「スプリット」とは、相手のモールの結合部分(選手と選手の間)に身体をねじ込み、モールを分断させる技術です。相手がしっかりとバインドしていない箇所や、疲れて結合が緩んでいる場所を見つけ、そこに対して強い力で割り込んでいきます。
成功すれば、相手のモールは真っ二つに割れ、力が分散してしまいます。分断された相手の前方グループはオフサイドの位置に取り残されることになり、ディフェンス側が一気に有利になります。ただし、これも「横から入る」反則と紙一重です。あくまで正面、あるいは自分たちが押し込んでいる方向から、真っ直ぐに割り込んでいく姿勢を見せることが、レフリーに反則を取られないコツです。
メモ: ドライブディフェンスでは、「声」が武器になります。「押せ!」「右だ!」「まだまだ!」といった声を出し合うことで、苦しい時間帯でもパックの結束を保つことができます。
ボールをロックして「アンプレアブル」を狙う方法

力で押し返すだけでなく、ルールを巧みに利用して相手の攻撃権を奪う方法があります。それが「アンプレアブル(Unplayable)」を狙うディフェンスです。これはモールを停滞させ、ボールが出ない状態を作り出すことで、守備側のスクラム(※)を獲得する戦術です。現代ラグビーにおいて、非常に重要視されているプレーの一つです。
相手のボールに絡むチョークタックル
アンプレアブルを狙うための代表的な技術が「チョークタックル」です。これはタックルの一種ですが、相手を地面に倒すのではなく、立ったまま上半身を抱え込み(チョークし)、ボールをロックしてしまうプレーです。相手が倒れなければラックにはならず、そのままモール状態へと移行します。
モールの中で、ディフェンダーが長い腕を使って相手のボールを抱え込み、外に出せないように固定してしまいます。相手はボールを動かせないため、モールを前進させるしかなくなりますが、そこで味方が加勢して前進を食い止めれば、「ボールが出ない+前進も止まった」状態が完成します。
モール停滞時のレフリーのコール
モールが前進を止め、ボールが出ない状態が続くと、レフリーはまず攻撃側に「ユーズイット(Use it)!」と叫びます。これは「5秒以内にボールを使いなさい(出しなさい)」という命令です。このコールが聞こえたら、ディフェンス側は勝利目前です。
もし、ユーズイットのコールから5秒経過してもボールが出ない場合、レフリーは笛を吹き、モールアンプレアブルを宣告します。この瞬間、攻守が交代し、ディフェンス側のボールでスクラムが組まれることになります。ゴール前でピンチを脱出し、さらにマイボールスクラムを得られるこのプレーは、チームの士気を大きく高めます。
ターンオーバーを狙うための腕の使い方
ボールをロックしてアンプレアブルに持ち込むには、腕の使い方が重要です。相手のボールキャリアに対して、ボールの上から覆い被さるように腕を巻き付けたり、ボールと相手の身体の間に自分の腕を差し込んだりして、ボールの自由を奪います。
このとき、ただ腕力で抱えるだけでなく、自分の体重を預けるようにして相手に密着することがポイントです。相手はボールを動かそうと激しく抵抗してきますが、一度ロックした腕は絶対に離してはいけません。味方の選手も、ボールをロックしている選手が倒されないように後ろから支え、パック全体でその一点を守り抜く意識が必要です。
リスク管理と持ち出しへの対応
アンプレアブル狙いは効果的ですが、リスクもあります。ボールをロックしようと上半身に意識が集中しすぎると、足がお留守になり、そのまま押し込まれてしまうことがあります。また、相手が「これはボールが出せない」と判断して、モールを崩してラックに移行しようとしたり、強引に脇から持ち出そうとすることもあります。
ディフェンダーは、ボールをロックしつつも、相手の動きを冷静に観察する必要があります。もし相手がボールを後ろに下げようとしたり、持ち出しそうになったら、すぐにロックを解いて通常のタックルやドライブディフェンスに切り替える柔軟性が求められます。「絶対にアンプレアブルにするんだ」と固執しすぎないことが、結果的に良いディフェンスにつながります。
人数差を作らせないディフェンスの組織論

最後に、モールディフェンスをチーム全体の問題として捉える「組織論」について解説します。モールはフォワード8人だけで守るものではなく、バックスを含めた15人全員の連携が必要な局面です。誰がどこを守り、どのような声を掛け合うかが、成否を分けます。
誰がモールに参加し誰が外を見るか
相手が強力なモールを組んできた場合、こちらも人数をかけて対抗しなければ押し切られてしまいます。しかし、全員がモールに入ってしまうと、外側に広大なスペースが空き、簡単にトライを許してしまいます。ここで重要になるのが「人数の管理」です。
基本的にはフォワード8人がモールに対応しますが、相手の勢いが強い場合は、バックスの選手(センターなど)も加勢に入ることがあります。逆に、相手がモールからボールを出そうとしている気配があれば、フランカーなどが素早くモールから離れ、外側のディフェンスライン(ピラーやポストと呼ばれる位置)を埋めなければなりません。この「入るか、出るか」の判断を瞬時に行うことが求められます。
バックス陣の指示とポジショニング
モールの中にいるフォワードの選手たちは、視界が遮られ、全体の状況を把握するのが困難です。そこで重要な役割を果たすのが、モールに参加していないスクラムハーフやバックスの選手たちです。彼らは「目」となり、大声で状況を伝えます。
「相手が右に動いているぞ!」「ボールが出た!」「もっと低く!」といった具体的な指示を出すことで、フォワードは迷いなく力を発揮できます。また、バックス陣は、相手がモールを囮(おとり)にしてバックス攻撃を仕掛けてきた場合に備え、常にラインを整えておく必要があります。モールを見すぎず、自分のマークする相手を見失わないことが大切です。
モールサイドの防御とブラインドサイド
モールの周辺、特にサイド(端)は「穴」になりやすい場所です。相手のスクラムハーフやウイングが、モールの脇をすり抜けてトライを狙う「ブラインドサイド(狭いサイド)攻撃」は定石です。ここを守るために、モールの最後尾や脇にいる選手は、常に周囲を警戒しておく必要があります。
特にゴール前では、モールを押し込まれつつも、最後の瞬間に相手がボールを持ち出してダイビングトライを狙ってくることがあります。ディフェンス側は、モールを押す力と、飛び出してくる相手を止める準備の両方を維持しなければなりません。これを防ぐには、やはりコミュニケーションと、役割分担の徹底が不可欠です。
ゴール前での必死のディフェンス
ゴールラインを背負った場面でのモールディフェンスは、技術以上に「気持ち」の勝負になります。「絶対に割らせない」「1センチも進ませない」という気迫が、相手へのプレッシャーとなります。ルールを守り、組織で守ることは大前提ですが、最後は身体を張って止める執念が、トライかノットトライかの境界線を分けます。
練習から「ゴール前」というシチュエーションを想定し、苦しい状況でも声を出し、規律を守り抜くメンタリティを養うこと。それが、試合本番でチームを救うビッグプレーを生み出します。
まとめ
ラグビーのモールディフェンスについて、その崩し方や守り方のコツを解説してきました。モールは攻撃側にとって強力な武器ですが、守備側にとっても正しい知識と技術があれば、ボールを奪い返すチャンスに変えられる局面です。
改めて要点を振り返ります。
・コラプシングは絶対に避ける
意図的に引き倒す行為は重い反則です。常に「立ったまま」プレーすることを心がけましょう。
・「サック」はタイミングが命
モールになる前、着地の一瞬を狙って低く倒すことで、モールの形成自体を防ぐことができます。
・「ドライブ」で押し返す
8人が一つの塊(パック)になり、低く密着して押し返します。相手の割れ目を狙うスプリットも有効です。
・「アンプレアブル」でボールを奪う
ボールを抱え込んで出させず、停滞させてマイボールスクラムを勝ち取る高度な戦術です。
・組織的な連携が鍵
フォワードだけでなく、バックスの声掛けやポジショニングを含めた15人全員でのディフェンスが必要です。
モールを止めることは、単に失点を防ぐだけでなく、相手チームに精神的なダメージを与え、試合の流れを大きく引き寄せる力を持っています。「モールは押されて当たり前」ではなく、「モールこそボール奪取の好機」と捉え直し、ぜひ日々の練習や観戦に役立ててください。ルールを守った激しいディフェンスは、ラグビーの最も美しい瞬間の一つです。


